僕は二人の喧嘩に口を出す事はしない。
一度源次に意見を求められ、当然正しいと思う源次の味方をした。
すると山が動いた…
親ばか婆さんである。
婆さんは、タイマンならば黙って聞いているが、僕が源次の味方をしよう物なら黙っていない。
婆さんもまた感情論である。
良夫ちゃんと、たいした違いがない。
しかし、痩せぎすの体躯から繰り出す怒声は、僕を縮み上がらせるのには充分であった。
巻き込まれる事を避けた僕に罪は無い…
はずである…
面白い事は面白いのだが毎日になると疲れた。
源次は、良夫ちゃんとの口喧嘩を通し、思いを口にする事に馴れていったようであった。
それが、どこでどう間違ったのか、僕の人としての行いにまでに口を開くようになった。
なぜか、毎日のように、僕は説教をされ始めたのである。
なんでやねん…
勘弁してくれ…
僕が1番の被害者である。
良夫ちゃんが絡むと、なぜか、いつも被害者は僕であった。
カード工場のタナカから受け取った、10通の封筒の中のカードを、次の日の朝10時にタケコブタに設置されている受付機に全て通した。
受付機のデジタル表示部分に出た機械言語を紙に書き取る。
なんの問題もなく、すぐに作業は終了した。
それから直ぐにタナカと連絡を取って封筒のカードを渡しに行った。
源次に何か言われた所で、態度を変える僕では無い。
前日と変わらない態度である。
「タムラさん、これで良いんでしょ?」
そう言いながら封筒を差し出す。
タナカが言った。
「田中です…」
「あ?」
「私の名前は田中です…」
「あ〜 名前… 苗字だろ?」
だからなんだ…
早く答えろや!
こんにゃろー!
タナカが嫌な顔をしながら答える。
「5時間程待って下さい。このカードからデーターを読み取って、新しいテストカードを持って来ますから」
それは前日に聞いていた。
データー取りは一日では終わらないと言う。
何日掛かるかもハッキリと分かっていない。
しかし、それが無駄になる事は絶対に無いと言う。
受付機を通る変造カードの比率を、ドコよりも早く上げて見せるとタナカは言った。
仕方なくダルいが一日に数度のデーター取りを約束していた。
源次も同じ様な事を言っている。
「一回や一日では無理でしょう。何回も往復するのは仕方ないんじゃないですかね。機械の内側からデーターを取るのと違い、外側からデーターを取るのでは、分からない事も多いと思いますよ」
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