変化 11

源次は5分ほどで店を出て来た。

なんの問題もなく設定を変えられたと言う。

これにより、この店の設定切り替えゴトが出来る台10台中、3台がゴトの餌食になった。

少し不安がよぎる。

始めてすぐは問題ないだろうが、三人の箱が積みあがれば、やはり店側が騒ぎ出すような気がした。

しかしこれは杞憂であった。

最高設定だとは言え爆発と言えるほど一気に出る事は無かったからである。

東京のスロットは店のドル箱の大きさや換金率にもよるが一般的に一箱並盛りで二万円になる。

夕方5時の段階で三人とも三箱前後を行ったり来たりしていた。

たいして出ない…

そう言う感想を僕は持った。

最初の当たりを引くまでに三万円ほど投資している奴もいた。

この日、一日を通して店員達が警戒の色を見せる事は無かった。

新しいゴトは簡単にはバレない…

三人とも閉店ギリギリまで打った。

明日になれば店側にゴトがバレている事は予想出来たので限界まで抜くためである。

最終的に全員が10万円ほどを換金した。

一連の流れを見ていて確信した。

これは短命なゴトだ…

短い期間で荒稼ぎする方法を僕は考え始めた。

ゴトは先細りだとしか思えなかった。

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他のゴト師やゴトグループでも、この設定切り替えゴト道具を手に入れている奴らはいるだろう。

僕が手に入れた段階で既に古い可能性もある。

リュウはまだ新しいとは言っていた。

どちらにせよ噂が広まる前に東京中のやりやすいパチンコ屋を全て回りたい。

道具をもう一台手に入れたい。

リュウに言う。

「お前打つのに一生懸命になってないで道具屋脅かしてでも道具買って来いよ」

「うん… 声はかけてんだけどね… 一台に二百万払うならすぐ入るけど高いでしょ?」

先に買った道具が六十万円だった事を考えると明らかに高い。

僕はケチである。

しかし考えてしまった。

たとえ二百万円でも道具代を回収するのに使い方にはよるが10日は掛からないのである。

買いか…

買わずか…

数日続けたこのゴトをトータルで考えると僕の判断は【買わず】だった。

一般人の打ち子は使いづらい事が1番の原因であった。

1番多かったのはお金をごまかす奴。

どいつも小銭をごまかすのだが、そのために店内で不自然な動きをするのである。

そしていらない疑いを店側に持たれていた。

脅かせば次の日彼らは来なくなる。

リュウには微妙なバランスで人を脅かす事は出来なかった。

自分も打っていたので見張り切る事も出来ないようであった。

貧すれば鈍する…

その典型に僕には見えた。

一般打ち子は、怖がる奴らも多かった。

いくら大丈夫だと言っても彼らは怖がった。

店員とのやり取りで変な事を言って事務所に連れ込まれる奴もいた。

そうかと思えば意気がりまくる奴もいる。

店員に食いつき過ぎて店中が騒然としていた。

それらをリュウに聞くたびに僕は疲れた。

リュウは自分の無能を僕に語っている事に気付いていないようであった。

管理のやり方をリュウにアドバイスしたが自分で打つ事をやめないリュウには無理だった。

きちんと管理だけをしている方がリュウの取り分はあがるように感じていたが彼は目先のお金に執着していた。

いまさらクビだとは言えない。

メロドラマはもう聞きたくなかった。

源次に言った。

「リュウは自分で打ってるから管理がしきれない。源次さんも少し注意して見ていて。でも店に入っちゃダメだよ」

「わかりました」

源次に無理をさせれば唯一捕まる可能性が出て来る。

本来なら設定切り替えが終わったら源次は店から離れる事が望ましいのだがリュウのブロックのために店の近くで待機していた。

リュウの無理が、全てを悪い方向へと回転させていた。

悪循環は、この後のゴトでも続いて行く…

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