電波ゴト50 〜相棒〜

ゴキブリは申し訳なさそうに言った。

「替わりの奴連れて来るから源次は使ってくれよ。兄貴に任されたシノギだから、回収しないとまずいんだよ…」

コイツ本物の馬鹿だ…

僕に泣きを入れたら、弱みにしかならない事に気付いてない…

それに僕が、ウジムシを必死になって助けたと思ってやがる…

まあ、都合が良いか…

「替わりの奴なんかもう知らねえよ。つうか源次もいらねぇよ。ちょっと見たらアイツも震えてたしな。ヘボじゃどうせ稼げないぞ」

「無理か…」

ゴキブリはそう言ってうなだれた。

「一つ聞くけど、お前ら源次から一日いくら回収する積もりなの?」

ゴキブリが何かを期待した顔で答えた。

「いや、あいつには一日2千円も握らせれば良いから、残りは全部回収する積もりなんだよ」

え?

全部…

コイツら…

得体の知れない怒りが込み上げる。

それをグッと飲み込んで言った。

「全部って言ったって、たいして稼げないぞ。お前らと同じ怖がりだかんな」

嫌な顔をしたゴキブリが聞いて来た。

「一日どれぐらい稼げるかな?」

「お前らだったら3万ぐらいだろ。アイツじゃ2万がいっぱいじゃないか。なにしろヘタレは稼げんよ」

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「これからカードは、もっと厳しくなるよ。僕のトコの根性ある奴らだって捕まってんだからな。源次が捕まっても困らないのか?金、回収出来なくなるだろ」

「それは困るんだよ。でも捕まっても直ぐ出て来れんだろ?出たらまた直ぐやらせるから、アイツが捕まるのは気にしないで良いから使ってくれよ」

そう言ったゴキブリの顔が歪んで見える。

酷く嫌な顔付きであった。

「さすがゴキブリさんはヤクザだね〜 アンタは結構やる事怖いね」

そう褒めた…

馬鹿はやっぱり喜んだ。

「俺は甘やかさない人間だからよ」

泥棒の僕だって分かる。

お前は人間のクズだ…

イジメる事に決めた。

全てが気にいらない。

「もう一人連れて来るってのは、源次の出した金額の見張りだろ?」

ゴキブリは頷いた。

「でもお前が連れて来る奴はもう使わねえよ」

「頼むよ〜 友達だろ」

そうゴキブリは言った。

一瞬殺意が芽生えた。

冗談でも言われたくない。

コイツに、泣き落としとは言え、友達と言われる僕とは、一体何者であろうか…

自分のやっている事を振り返れば、僕とゴキブリに違いは無い…

体から、力が抜けていく気がした。

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