借金で追い込まれている奴が黙って10万捨てた…
更にカードをいくら使ったのかを聞くと6千円分だけだと言う。
源次は疑われてなどいない。
僕が損をさせた…
まさか、そんなに出しているとは思わなかった。
「なんで呼び出した時、言わなかったのさ?」
「まあ…」
源次はひと言、表情も変えずに言った。
ショックはあるはずなのに僕を責める顔や態度は一切ない。
諦めや我慢が癖になっているように感じた。
コイツは切れない…
いや…
切らない…
借金を完済させてやろうと決めた。
この後すぐに手下の一人を換金の為にホールへ向かわせた。
しかし来るのが遅く、出玉は片付けられていた。
深追いはせずに諦めた。
「借金いくらあるの?」
源次はクビを振って答えない。
「ゴトで返せる金額なのか判断するから言ってみな」
それでも源次は答えない。
ならば仕方ないと思い、聞く事をやめた。
それから30分ほども経っただろうか、源次はボソリと言った。
「2400万です…」
随分遅い答えですこと…
顔を見ると表情一つ変えていない。
暗いな…
コイツ…
「随分あるね… でも返せない金額じゃないよ。危ないゴトなら半年ぐらいかな… 安全な変造カードだと一年掛かる。その頃カードは終わってるかもしれないけどね」
源次は驚いた顔をしている。
彼が感情を顔に出したのは、この時が初めてであった。
変に期待されても困るので言った。
「今言った期間、捕まらないツキがあって、根性とテクニックが有ればだよ… 9割の奴が出来ないで捕まったり逃げだすよ。全部自分にかかってる」
こののち僕は源次をユックリと知って行く事になる。
源次は口が重く、彼の事を詳しく知るまでには時間が掛かった。
オッサンなどに興味も無かった。
ただの一人の手下に過ぎない関係が続いていく。
この日の夜、ゴキブリとウジムシを呼び出して、脅かしまくった。
「なんだよ!コイツ!ブルブル震え続けやがって!僕まで捕まりそうになったじゃねーかよ!」
ゴキブリとウジムシは、うなだれている。
ゴキブリは、僕に逆らうと言う選択を捨てているようである。
女、子供でも少しは言い返す…
逆切れもしない。
随分と我慢強い奴らであった。
そこまで我慢強いならカタギになれよ…
そう思う。
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