頭がボケていなければ、自分達の仕事が、どこか後ろ暗い事は認知出来ている。
出来ていない奴も多数存在するが…
話し方で、警察は疑うと思わせる。
後ろ暗い事を認知出来ている立場の上の人間は、警察に疑いを持たれる事を嫌う。
警察に目を付けられる事が得策ではない事を知っている。
損をしないゴトをされて、損をする可能性が出て来る。
損得の計算をさせて捕まえる事が損であると勘違いさせる。
そしてトドメに脅かす。
僕の周りに巨大組織があるように匂わせる。
店員を襲う…
お客さんを襲う…
店を潰す事は出来ないが、怖がらせて店にお客さんが来なくする事は簡単だと思わせる。
針は開放に振れる。
彼らは犯罪者ではなく、一般人なのである。
損が無い以上、触らぬ神にタタリ無しを選ぶ。
全ては逃げないと決める事から始まる。
最悪の状況は、逃げない事で切り開けると僕は信じていた。
手下達に、いくら教えても、僕は頭が可笑しいと言われ続けた…
そして彼らは走って逃げる…
僕にはソレが、捕まりたいんだとしか思えなかった。
この日も僕は、アッサリ開放された。
防犯カメラを見返される事もなく、事務所に引っ立てられる事もなく。
僕を面倒臭い奴だと彼らは認識した。
それで充分であった。
ウジムシを開放されたのは余計であったが…
店を出て直ぐに源次を携帯で呼んだ。
「店にバレたから換金は諦めて急いで外に出ろ。外に出るまでは慌てないで、外に出たら走って店から離れろ。分かった?」
そう言って待ち合わせ場所を教えた。
源次は何一つ言い返す事なく、はい、と言った。
油断していると、冷静になった店員達は、源次に牙を剥く可能性が高い。
混乱から覚めて、僕達を開放した事が失敗だったと気付いている可能性はある。
ウジムシも僕の後に開放されたが、連絡を取らなかった。
少しするとウジムシから電話が来た。
電話に出る気は無い。
店の周りをウロツイていて捕まれ…
そう思っていた。
電話が鳴りやんだ所で電源を切る。
少しすると源次が走って来た。
車に乗せて走りだす。
気になっていた出玉の状況を聞いた。
「何箱出てたの?」
「20箱ぐらいです」
ギクッとした。
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