知らぬ間にゴト師3

それはパチンコのパッキーカードと言う物であった。

【パッキーカードとは、パチンコ屋さんの中で使用、流通、販売されているテレホンカード状の現金と同等の価値のあるカードである。五百円から、一万円までの数種類のカードが店内で販売されていた。テレフォンカードと同様に全国のパチンコ屋で使用できる。大当たりが連チャンしやすい、CRのパチンコ台を打つ為には、必ずこのカードを買う必要があった。その当時は金券ショップ等でも売り買いされていた】

妄爺が出したカードは、年代の差で知らない人も多いと思うが、一時期テレビなどで長い期間騒がれていた、パッキーカードの偽造、変造カードであった。

この頃は、まだテレビなどで騒がれる前の段階だったので、使い終わったゴミだと思った。

何故なら芋ばっかり食べていて死にかけてるじい様が、1万円のカードを20枚も出したから…

20万円持っているのと意味は同じである。

手に取ってカードの裏を見た。

使用したり使い終わっていると、テレホンカードのようにパンチ穴が開いている。

あら、びっくり!

穴が無い…

男の子?! 

失礼御免…

拾ったなと思ったのは当たり前だと思う。

「しのぎにしろって貰ったんだけど、パチンコした事無いんだよ」

そう妄爺は言った。

しのぎ?

お前はヤクザか?

仕事って言え!

いきがんなハゲチャビンと思った。

考える必要は無い。

当然のようにすぐチケット屋に売る事をすすめた。

そうしたら妄爺が変な事を言う。

「それ偽物だよ。よく見てみな」

ん?

裏をひっくり返して穴の開く所をよく見ると穴が埋めてあるのが微かに分かる…

使えねーよ!

穴埋めたら使えんなら金持ちなるわ!

そう思ったが妄爺は使えると言い張る。

磁気がなんたらとか言うけれど、妄爺自身も分かっていないから、意味がサッパリ伝わってこない。

言い張るからパチンコ屋に持って行って、パチンコ台の横に付いている【サンド】と言う、カードを玉に変える機械に入れて見た。

店に行く時、妄爺が言った。

「見つかったら捕まるから気をつけてな」

それぐらい分かるよ…

試すだけだし罪の意識は全く無かった。

使えないと少し思っていた。

ところがビックリ…

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投入金額の表示されるトコに100と言うデジタル文字が出た。

出たから貸玉ってボタンを押しちゃった…

タマ出てタマげた!

使えるじゃん!!

玉出たら何するか?

打つでしょ?

普通?

打たないか…

僕は打っちゃいました…

知らぬ間に、ゴト師の仲間入り。

ガーン!

いや…

本当は知っていた。

数字が出る事を、強く、強く願っていた。

この日の事は忘れられない。

僕の、ゴト師記念日。

お店に向かう前に妄爺が言っていた。

「それ全部使って良いから、出たら米食わして」

なんか笑えなかった…

貧しいのを理由にはしない…

僕は、ただお金が欲しかった!

この日、三万円分の変造カードを使って三万円出た。

お金でやってたら勝ち負け無し。 

ただで貰ったカードだったから丸ごと儲け。

「焼肉行こ」って帰って言ったら妄爺の奴「ホントに使えたんか!?」って言いやがった。

僕はテストさせられたんか?

芋食ってろ!

そう思ったけど、焼肉に行った。

笑えるのは妄爺が、肉少ししか食わないで米ばっかり食っていた事。

別段遠慮をした訳では無い。

突然の肉を体が受け付けなくなっていた。

この日妄爺といろんな話しをした。

妄爺が刑務所から出て来て間もない事…

どんな罪で服役していたか…

実はまだ現役のヤクザで、出所して来た時、組が解散していた事… 

ヤクザをやめたいと思っている事。

いろいろ聞いて思った…

僕…

ハゲジジイって言ったよね…?

いろいろ聞いたからと言って態度を変える訳にはいかない…

その後も態度を変えない僕…

怖くねーよ…

ちょっとチン○が縮むだけさ…

何年かして妄爺は組に入った。

その組に遊びに行って、変わらぬ態度で僕は妄爺と話す。

その時の、妄爺の若い衆の、僕を睨む目と言ったらシャレならんぐらい怖い。

態度変えたい…

そんな話しをしながらも、僕はゴト師をどうするか考えていた。

僕は変造カードでパチンコをして食って行きたいと妄爺に言った。

妄爺は仮釈放中だしパチンコはやりたく無いと言った。

確かに妄爺の経歴を聞くと、パチンコで捕まらせるのは忍びない。

次は、何年刑務所に入るか分からない。

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