知らぬ間にゴト師4

このころ焼き芋を売り始めて三ヶ月経っていたのだが、ヨゴレの親玉に教わった芋の売り方をやめて、自分流に売っていた。

何が良かったのかバンバン売れた。

手取り二万円ぐらいになっていた。

それでも妄爺は全然売れない。

ヨゴレ3人組も変わらず売れていなかった。

僕、芋屋の才能あったのね…

嬉しくない。

ゴト師をやると決めた僕。

焼き芋屋を続けると決めた妄爺。

焼き芋屋を続けるなら妄爺を、一人で食えるようにしてやらねばならない。

僕から、一切、お金を受け取りたく無いと言っている。

ならば搾取しまくりのヨゴレの親玉からの自立と、寮からの脱出だけはさせたい。

もう一度、一から芋の売り方を教えた。 

固定客も妄爺にゆずったら、どうにか一万円ぐらい売れるようになった。 

ヨゴレの親玉のトコに居て、一万円稼げるならば、自立さえすれば手取りは二万円になる。

焼き芋で稼いだ貯金と、17万円分の変造カードで出したお金を合わせた。

妄爺は嫌がったが、そのお金で、芋用の車と釜を一台作り部屋を借りた。 

その部屋に家なき子の妄爺を押し込み、僕は焼き芋のお客さんだった女の子の家に転がり込んだ。

男の二人暮しなどキモい。

冗談ではない… 

女の子と仲良くなっていて助かった…

変造カードを、初めて使ったあの日から、二週間で脱出に成功出来た。

妄爺は脱出決行の日、寮に住むヨゴレ三人組に挨拶に行くと言い張った。

何するんだ…?

妄爺にして見れば怨み重なる三人衆である。

怨み晴らさでおくべきか~

そんな感じであろう。 

なぜか菓子折りを持って行った…。

どうやって仕返しするのか、僕には分からなかった。

まさか挨拶だけ…?

三人組を目の前にして妄爺は言った。

「お世話になりました」

なんでやねん!

呆れるわっ! 

二人のヨゴレは「じゃあね」と言った。

一人はシカトしている…

妄爺は、そのまま外に出た。

僕は少しイラッと来たから、座っているシカトヨゴレの脳天に、力いっぱいゲンコツを落とした。

ゴツン!!

冬空に突き抜けそうな良い音がした。

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寮からの脱出の為に20枚の変造カードは使い切っていた。

この時の変造カードを使った感想を言うと、間違い無く月収100万円は軽く越えると思った。

変造カードを買い取る値段にもよるけれど…

この時カードの値段の相場が分からなかった。

一万円の変造カードを二千円ぐらいまでで買い取れるならイケるような気がした。

ただ、僕の仕入れ値段は、誰にも負けないぐらい安かった。

一万円の変造カードが500円であった。

その後、知り合って一緒に行動する仲間が沢山出来たのだが、いつも僕の仕入れ値段が一番安かった。

安いのには、当然理由がある。

普通変造カードを作っている工場(マンションの一室など)は、捕まるのを嫌い、カードを店で実際に使う人間の間に人を立てる。

ホールで捕まった人間に、工場の場所を喋られると、芋づる式にみんな捕まるからである。

間に立つ人間は、ヤクザだったり自分達が信用する人間である。

そのヤクザや、工場に信用された人間が捕まるのを嫌うと、更に間に人が立つ。

タダで捕まる危険があるのに間に立つ人間は居ないので、当然のように仕入れ値に100円程度上乗せする。

間の人間の数と、欲張りさんが混ざったカードは必然的に高くなる…

仲間になった人の中には、一万円の変造カードを、四千円で買っていた人もいる。

ゴト師が使う道具や情報は、売りに出されるとだいたいこんな感じである。

一枚4000円でも儲けは少ないが出る。

ただ、捕まる可能性があるのに少し寒い…

あ、思い付いた…ダシタ?

一万円の変造カードは700円から1500円の間で取引していた。

妄爺が、この変造カードを兄弟分から貰った時、シノギにしなと言われていた。

兄弟分が言うには、自分で打つのでは無く、安く卸すから人に売れと言う事であった。

しかし妄爺はカタギに成ろうとしていた。

いくつかのカタギの仕事はして見たが、我慢出来ない事が多く転々としたらしい。

僕は、それを聞いた時、イジメられたんだなと理解した。

そして焼き芋屋に落ちた(焼き芋屋さん、ごめんなさい。僕が働いたトコは、そんな感じだったので、許して下さい)

だからと言って妄爺はヘタレでは無い。

後に妄爺絡みで危険な場面をいくつか経験した。

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