変化 12

結局このゴトがやりやすかったのは二ヶ月ほどであろうか…

最終的に10人ほどの打ち子を連れて出来る店を毎日三軒ほど作っていた。

僕のもとには何もせずに一日二十万円近くのお金が届いた。

残りを源次とリュウで分けていた。

一人三十万円ほどにはなったのではないだろうか。

リュウは更に自分でも打っていたのでもう少しなった。

時間が経つに従い打ち子の手取りは増やして行ったようである。

危険が増したからである。

店側の対策は電波センサーなどのハイテクに頼る事はすぐには無く、見回りの強化や情報の共有に頼っているようであった。

疑わしい奴に張り付く。

それが二ヶ月ほど続いた。

随分とサービスの良い業界だった。

二ヶ月過ぎて店側が取った対策はいくつかあった。

しかしまだセンサーはつかない。

どうしてもお金はかけようとしない。

多少なりにも効果があった対策は一つである。

当たりが来ると一回一回台がフリーズして、それまでに獲得していたコインを機械が自動で吐き出すのである。

そして店員が鍵で台のフリーズを解除して次のゲームに進む。

これをやられると打ち子は怖がった。

当たるたびに台を開けられる事が不気味なのである。

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店側はその台の元の設定を当然知っている。

悪い設定のはずだったのに当たりが連発して箱が積みあがれば疑いは増した。

露見しても設定を切り替えたのが打ち子でない以上突っぱねれば問題なく打てる。

事実店側の対応もその通りであった。

しかし店員達は打ち子の後ろに露骨に張り付いて後ろ姿を怒りの形相で睨み続ける。

最初からそう言う状況になる事は予想していたので打ち子を集める時には言ってある。

「気にしないで打ちゃ良いんだ。変に台をすてる方があやしい」

打ち子はその点を了解していたはずなのに実際に店員に絡まれると恐れた。

途中でリュウに泣き付き「もう打てない」と言い始める。

脅せば次の日来ない。

リュウも困った事だろう。

どうにか宥めすかして打ち続けさせていた。

更に時間が過ぎて今度はメーカーが対策に乗り出した。

初期設定の切り替えである。

これをされたらこのゴトは終わりであった。

しかし全てのパチンコ屋への対策には時間が掛かった。

東京を中心に対策されて行ったように感じた。

段々と東京を離れて近県へと設定切り換えゴトは移動して行った。

同時にスロットコーナーへも電波センサーが設置されるようにもなって行った。

更に簡単な対策方法も編み出された。

リール横の配線に電波がのって電気系統をシャットダウンする道具だったので配線にアルミホイルを巻いて電波を散らす方法を取り始めたのである。

これも効果はてきめんだった。

ギンパラの電波ゴトにもこの対策は効果を発揮していた。

しかしこの対策は情報を知っている店だけが取れた。

全てのパチンコ屋がこのゴトの情報を知るまでには一年近くを要した。

まだまだパチンコ業界はザルだった。

ザルだが目に見えてこのゴトは尻すぼみになって行った。

近県から地方都市へ…

埼玉、茨城、福島、宮城、青森…

北海道まで渡った奴らもいる。

ご苦労なこってある…

時間が経つに従いパチンコ業界はこのゴトに強気な姿勢を見せるようになって行った。

理屈や違法など関係なく打ち子を拘束したり打つ事を止めるのである。

こうなると警察に逮捕される事は無かったが打ってはいられなくなった。

揉め事ばかりが増えていた。

終わりである。

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