変化 10

「うん… そうだけど…」

「だったら私がリュウさんになんかあったら助けます。愛してる人の為に体を張って頑張るなんて素晴らしいじゃないですか」

「…… 」

気持ちわるーーい!

愛とかコイツも言った!

リュウは源次にも朝の車の中で、コソ泥ホテル王の話しや、雪ちゃんの事を話していた。

愛にかぶれた男が二人…

サブイボが全身を襲った。

「あっそう… なら好きにしたら…」

リュウが突然でかい声をあげた。

「ハオラーハオラー!!」

そう叫びながら狭い車の中で源次に抱き着く。

ハオラー!?

ホモ!?

なに!?

なんなの!?

喜びを分かち合う二人…

僕は二人の横で絶句して固まった。

帰らせて…

同じ空気を吸いたくない!

しばらくチチクリ?あっていた二人が離れた。

あさっての方を向いて瞳孔の開き切った目をした僕に源次が言った。

「じゃあこれからもう1台私が設定を切り替えて来ます」

僕は無言で、あさっての方を向いたまま、うん、うんと何度もうなずいた。

会話をする事さえ気持ち悪かった…

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道具の入ったセカンドバックを手に源次が車を降りた。

操作方法は前日に既に教えてある。

源次は当然のように僕にブロックを頼む事はなかった。

しかしリュウが源次を追い掛けるように口を開いた。

「源次さん!俺がブロック行くよ!」

僕はリュウがゴト師として二流のような気がした。

この程度のゴトにブロックはいらない。

余計な事をして防犯カメラに顔をさらすのも得策ではない。

そんな事もわからないのか?

そう思う。

リュウは別段怖がりでも根性無しでもない。

ただ何かが足りない。

本当に危ないゴトはやらせないようにしようと思った。

源次がリュウに笑いながら言った。

「ブロックはいらないです。簡単ですから少し待ってて下さい」

リュウが戸惑い気味に言う。

「でも… 一人より二人の方が良いでしょ?」

「いいえ。ブロックがいる方が危険です。守って貰えると思えば油断が出ます」

源次は僕と同様の思いを口にした。

少し安心した。

リュウは納得のいかない顔で首をひねる。

僕がリュウに言った。

「ブロックなんぞいらないよ。便所にでも行って泣きながらプルプル震えてろ。このヘタレが」

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