変化 9

2台目の設定を切り替えて僕は店を出た。

店内にいた時間は10分に満たない。

車に戻り打ち子として連れて来ていた手下二人に設定を変えた台番号を伝える。

同時に初期投資に掛かるお金を渡す。

「金ごまかすなよ。すぐわかるからな…」

ごまかしが必然。

こちらにスキが見えれば必ずごまかす。

しかし管理はリュウに任せた。

僕にはそれ以上の脅しを言うつもりはなかった。

一日仕事でたいした儲けにもならない彼らを余りきつく締め付けても仕方ない。

先の短そうなゴトだった。

しかしこの点でも使うのは僕の手下達より一般人がのぞましい。

人は悪事を長くやると良心をなくして行く。

必ず染まる。

一般人ならば僕の手下達よりはマシだと言う程度ではある。

二人を店に送り込んですぐにリュウが口を開いた。

「どうだった?」

「簡単だった」

リュウが少し言いづらそうに言った。

「もう1台作れない?」

「あ…?お前がやんのか?」

「うん…」

めんどくさい奴である。

「捕まんないって言っても同じ店に三人で入って皆が箱積んだら店員だって黙ってないぞ。なんか言われた時お前は〇国人だって間違いなくバレる…」

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「バレるかな?」

「…… 」

当たり前だ…

ニーハオ野郎!

僕のジト目でリュウは僕の言いたい事を理解した。

「バレても言い抜けるよ!偽造の外国人登録書も持って来たし最近作った偽造のパスポートも持って来た!」

偽造人間リュウの誕生である…

余りカッコ良くない。

なんか弱そうだ…

僕は仕方なく言った。

「そんなもんいくら持ってても無駄だ。設定が変わってる台に〇国人が座ってるだけで店側は信じない。全部偽造だってすぐバレる。警察を呼ばれたらしのげないだろ?」

「しのげるよ!絶対平気だよ!やらしてよ!」

どうして良いのかわからなくなった。

今回のゴトはゴト師としての腕は関係ない。

ずぶとい人間ならば誰でも出来る。

店側に何か言われてもシラを切れればそれで良い。

しかしそれは日本人ならばである。

僕は、したくない判断をした。

「駄目だ。やらせない。管理だけしてろ」

リュウは悔しそうにうつむいた。

横から源次が口を出した。

「私がこれからずっと設定を切り替える役をやるんですよね?」

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