変化 7

店員がお辞儀を終えて僕の目の前から姿を消した。

泥棒に頭下げてやがる…

ノンキな奴だ…

この店の店員は列に入る前と、列から出る時に必ずお辞儀をする。

そう言う店は結構多い。

その余計な数秒や行動がゴト師に味方するスキになる事になぜ気付かない。

彼らの多くが、ゴト師を捜す時は、お辞儀などせづに列への出入りをする。

行動のパターンを読まれた店員に、本当に稼ぎをあげる新しいゴト道具を持ったゴト師を捕まえる事は出来ない。

すぐに次に狙うと決めていた台の前に立った。

右隣にお客さんが座っていたが左隣は空席であった。

ひと呼吸置いた。

右隣のお客さんが僕をチラリと見たような気がする。

もう僕には細かい事をする気が無かった。

適当…

誰に見られた所で問題は何も無いと確信していた。

台枠のランプが消えた事に気付かれてもお客さんには、何が何やらわからない。

狙い台と椅子の間に体を入れたと同時にリール横にバックのアンテナ部分をくっつけてリモコンのボタンを押した。

消えない…

なんだよ…

とっとと消えろ…

反応しない事は予測しているので、バックを少しずらしながら、慌てずにもう一度リモコンのボタンを押した。

パッとスロット台の全てのランプが消えた。

よし…

確実に消えてる…

ゆっくり台に座りながら持っていた一握りのコインを下皿に置いた。

同時に台に電気が戻った。

右隣のお客さんが僕の下皿のコインをチラミした。

見んなっての…

うざいから…

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一般のお客さんにゴト師を見破る事は難しい。

見破れるのは、余程のへたくそか、ゴト師自身が見られても構わないと思っている時である。

ゴト師を見破った積もりでも逆に見張られている場合の方が多い。

数人でゴト行為を行う場合は多々ある。

得意になってすぐに店員に密告に行くなどは危険である。

逃げ切ったゴト師に帰り道、待ち伏せされる事すら起こる。

「あのガキひっぱたいてやった!」

などと手下達がたまに言っていた。

だいたいが八つ当たりなので、2、3発殴られる程度で済むだろうが…

相手による。

どうしても正義感を振りかざしたり懸賞金が欲しいのならば安全な方法を自分なりに考えるべきである。

絶対に忘れてはいけない事は、腐っても犯罪者を相手にすると言う事である。

責任は全て自分に降り懸かる。

断言する…

イザになった時パチンコ屋は貴公を助けたりはしない。

警察への通報などは被害にあった後である。

どうしてもの人も居るだろうから、一つだけ簡単な密告の方法を書いて置く。

自分がゴトの確認をした時、そのゴトに気付いた事を、ゴト師に気付かれてはいけない。

素知らぬ顔でやり過ごす。

この時に少しでも動揺を見せれば周りに神経を配る事ばかりをして来ているゴト師に気付かれる可能性は高い。

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