変化 6

僕を近くのお客さんが確認した直後が一瞬のスキであった。

一度近くに誰が座るのかを確認したお客さんは、すぐに自分の台に集中する。

確認された事を確認した直後にスロット台の横に付いているサンドと呼ばれる貸しコイン機に千円札を送り込んだ。

同時に左手のセカンドバックのアンテナを台のリールの左側に近づける。

全ての動きを可能な限りユックリにして狙い台だけをボンヤリ見ている。。

ギョロつかせた目の白目は、思いのほか光を発する。

顔や手に当たった照明も急激な動きをすると光る。

その光は人の視線を呼ぶ。

コインがサンドからジャラジャラと音を起てながら出て来ると同時にユックリ座りながら右手のリモコンボタンを押した。

無音…

しかし台枠の派手なランプと盤面のランプが同時にパッと消えた。

よし!

ユックリとセカンドバックを膝の上に置きながらサンドから出たコインに右手をやる…

あれ…

再起動…?

思うと同時に盤面に光がパッと戻った。

なんだこりゃ…

寝てても出来る…

そう思った。

サンドから取ったコインをスロット台の下皿に移しながら両側に座るお客さんの肩口を見た。

人を見る時は必ず肩から下である。

顔に目をやれば相手も見られている事に気付く事が多い。

特に相手が女性の場合は視野が広い。

両隣の二人は自分のスロット台に集中しているようであった。

スポンサーリンク

下皿から三枚コインを取りスロット台に投入してスタートレバーを叩く。

スロット台は普通の制動をしていた。

問題なし…

しかし本当に設定が6に変わっているのかは知れなかった。

台の外側から現在の設定が分からない事が段々と僕を不安にさせる。

ん…

いま間違いなく電気消えたよな…

てかホントにこんなんで設定変わるの?

いくら考えても確認の方法が無いのである。

やっぱり練習台買ってチェックしないと駄目かもな…

めんどくせーなー…

そんな事を考えながら下皿のコインを10枚ほど残し、残りをかき集めて席を立った。

打ち子をやらせる手下を二人連れて来ていた。

もう1台作りたい。

既にこのゴトが遊びだと言う事は確信していた。

センサーや対策さえなければやり放題だと思えた。

この当時東京近郊のパチンコ屋は玉やコインを台移動の際に持って移動する事は禁止であった。

そんな事はお構いなしにコインを持って次の台を物色する為に席を離れた。

一度店員がこの列に来るのを待つために通路を往復した。

往復しながら次の台を決めた。

店員が前から来た。

通路の真ん中辺りで僕とすれ違う。

そのまま少し歩いて立ち止まり店員が歩いて行く方へと僕も歩き出した。

後ろから見た店員は何も気にしていないように見えた。

コメント