流転 58

あの貧乏人ども…

チラチラチラチラ見やがって!

そんなに必死にやれるんだったら真面目に働け!

僕はいつもスロプロ達を見てそう思っていた。

人の台を盗み見るような視線がウザい。

こちらがゴトをしていなければ「何見てんだ!見んなクズ!」と、いつも吠えたかった。

そのひと言がゴトをしている為に言えない。

元々僕は、虚弱体質のわりに、すぐそう言う事を勝ち負けは別にして口にするタイプであった。

言えない事がいつもストレスであった。

絶対あいつらの真似はしない…

あんな目をして人の台を盗み見るぐらいなら僕はコソ泥で良い…

そう思っていた。

これが僕が、パチプロやスロプロを邪魔に思い嫌う理由である。

勝つ為の手本と呼べるスロプロの真似を拒否した事が、僕をスロットでも引き弱王にした。

邪魔すんなや!!

パチプロ、スロプロのみなさーーん!

妄想ですよーー!

ごめんちゃい。

リュウは納得のいかない顔をしながらも焼肉屋の一室で道具の説明を始めた。

「スロット台の中とか仕組みは知ってる?これはこの道具に必要な事だよ!」

知らん…

機械いやだっての…

「見た事だけはある…」

仕方なくそう言った。

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この、電波で設定を変えるゴトは短命であった。

最終的に地方まで出稼ぎに行っても1年は持たなかったと記憶する。

現在はメーカーが全て対策して二度と出来ないゴトである。

スロット台の中も現在とは違う。

リュウが言う。

「設定ボックスって知らない?」

「知らない… それ旨い?」

「食えない!」

「あっそ…」

うざい奴…

この当時スロット台を開けると左手隅の方に設定を切り替える為の設定ボックスと呼ばれるテイッシュ箱を半分にしたような大きさの箱がついていた。

店の人間が設定を変える為には設定ボックスに鍵を差し込んでゴチャゴチャやる…

ゴチャゴチャやっている途中で一度スタートレバーを上から叩いたりして設定を切り替える。

時間にして30秒は掛からないが、設定を変える為には、店員とは言え必ず台を開ける必要がある。

それをこのゴト道具は、台を開ける事なく、鍵を使う事なくやると言う。

仕組みは単純であった。

この当時のスロット台は、パチンコ屋がメーカーから仕入れた時の初期設定が、6にセットされていた。

強制的にでも、スロット台を初期状態に出来れば設定が6に変わると言う事である。

初期状態にする為に電波を使う。

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