流転 53

リュウが、ギンパラ電波道具似のゴト道具を大事そうに扱いながら、僕の予想通りの事を言った。

「この道具も電波なんだ!」

「うん。そんで?」

「そんでって、知ってたの?」

「知らんよ。見りゃ分かんだろ。そっくりじゃねーか」

何か驚かない事がおもしろく無いようであった。

めんどくせーなコイツ…

仕方なく言った。

「え!電波なの!?マジで!?うっそ!すんげえな!びっくりだな!驚きだな!桃の木だな!サンショの木でもあるな!どうだ… これで良いのか?」

リュウが苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「良いよ… そこまで言ってくれなくて…」

満足させてやろうと思った事が逆に失敗したようである…

テンション下がり気味のリュウが言う。

「ところでスロット知ってんの?」

「遊び程度で… でも目押しはどうにか出来るぞ!」

「フフン…」

リュウが僕を鼻で笑った…

鼻でリュウに笑われてしまう読者の為に、少しスロットについて説明しよう…

僕自身、いまだに分かっていない事が多々あるので、難しい事は説明出来ない。

初心者レベルの説明である。

以下の可能性もある…

このお話には、それで充分なのである。

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スロットとは、パチンコとは全く遊戯方法が違うゲームである…

台の形状も全く違う。

パチンコはパチンコ玉を使って遊戯するがスロットはコインを使って遊戯する。

この当時スロットの当たりは基本的に二種類であった。

【ビック】と呼ばれる大当たりと【レギュラー】と呼ばれる小当たりである。

ビックは店毎の換金率にもよるが一回約6千円前後になった。

獲得枚数は300枚から350枚である。

そこへいくとレギュラーは100枚ほどの獲得枚数にしかならない。

通常ビックはビックと普通に呼ばれるが、レギュラーは獲得枚数が少ない為に【お化け】や【バケ】などと呼ばれて忌み嫌われていた。

しこたまハマった台でバケを引いたりすると青い顔になってゲロを吐いたりする…

心臓が止まって救急車で運ばれたりする人もいた。

マジである。

ハマッてバケ、ハマってバケを繰り返す人はマゾである…

てか、僕である…

ちくしょーー!!

遊戯方法は盤面にあるドラムと呼ばれる画面に数字の7を三つ揃えるか、主要ロゴやメインキャラクターを三つ揃えるだけのゲームである。

いくつか違う物を揃える台はあったが小数なのではぶく。

7や主要ロゴやメインキャラクターを三つ揃えるのが僕が引けないビック…

【BAR】が僕がよく引くバケ…

【BAR】が憎くて仕方ない…

先に進まないので泣き言はやめる…

遊戯方法自体は単純である。

右手でコイン投入口に三枚のコインを投入して左手でスタートレバーを上から下に叩く。

するとドラムが回転する。

ドラムを止める為の停止ボタンが三つあるので左から順番に押して図柄を止める。

ドラムは三段になっているので当たりの有効ラインは、横三本と×ラインの五つである。

出た図柄がビック図柄なら大当たり。

レギュラー図柄なら小当たり。

しかしいきなり大当たりや小当たりを引く事は無い。

そこには法則がある。

この当時は当たりの前にリーチ目と呼ばれる出目を引かなければ当たらない機種がほとんどであった。

そのリーチ目は機種毎に数種類から数十種類ありいちいち覚えて置く必要があった。

しかしどの台も似たようなリーチ目だったので1、2台のリーチ目を覚えれば応用出来た。

代表的なリーチ目が【77BAR】や【BARBAR7】などである。

ハズレのスイカやリプレイと書いてある絵柄が決まった形に揃うのもリーチ目で多かった。

ドラムにリーチ目が揃った所で当たり確定である。

あとはドラムにビックかバケのロゴを揃えるだけである。

どちらの当たりかはスタートレバーを叩いた瞬間に機械の内部で既に決まっている。

その後リーチ目が出るかどうかなど、ただの演出に過ぎない。

なぜリーチ目があるかと言えばゲーム性の向上の為であろう。

ゲーム性を上げればお客さんのスロットへの依存度が上がると誰かが気付いた結果である。

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