「んで?雪ちゃんなんて言ってんの?」
「いや… 雪に言えない…」
は?
「言えないって… 言わなきゃ駄目だろ?」
「でも言えない!」
「なんで?」
「今では俺が彼女を愛してるんだ!」
ぐわ!
愛とかまた言った!
それもでかい声で!
引くわ!
愛だの恋だのを堂々と口にする男の神経が、僕にはどうしても理解出来なかった。
ただ鳥肌が立った。
気持ちの悪い生き物を見る目で僕は言った。
「金は貸さんよ… 金借りてホテル王になれるなら僕がなりたいわ…」
貸すにしても限度を越えている。
「分かってるよ… お金を借りたいって話じゃないよ…」
こいつやばい…
帰りたい…
それでも仕方なく聞いた。
「じゃあ何…?」
いつもは取り澄ました顔をしているリュウが、気合いの入った顔で言った。
「お前達のゴトにまぜて欲しいんだ!」
「は?駄目だろ?今厳しいの知ってんだろ?どんどん捕まってるし。雪ちゃんうるさいだろうし…」
「もうそんな事言ってられないんだ!俺は雪を幸せにする為に稼がなきゃいけないんだ!何がなんでも俺が雪を絶対幸せにするんだ!!」
目の前で繰り広げられるチープな恋愛劇に僕は言葉を無くした。
全く感動出来ない僕がいた。
逆に笑いそうであった。
ここで笑えば喧嘩になる事は理解出来たので奥歯を噛み締めて我慢した。
これ以上何かを言われたら吹き出す事を我慢出来ない。
話しを先に進める為に言った。
「分かった… 分かったから落ち着け… な!ほら!肉食え!貧しいんだろ!ご飯代は恵んでやるから!右や左の旦那さま〜って言ってみな!」
リュウが怪訝な顔で聞いて来た。
「なにそれ?」
「え?知らないの?」
「知らない…?」
「日本に昔からあるおまじないだ。道端にゴザ敷いて正座で座って、前に缶詰の空き缶とか置くんだよ。それでそのセリフを言うんだ。右や左の旦那さま〜 どうか恵んでくださいな〜って。そうすっと優しい人が小銭とか入れてくれるか…」
「コジキか!!」
リュウが、みなまで言わせず突っ込んだ。
僕は笑いながら言った。
「お前な、金が無くなったくらいでオタオタすんな。捕まってなきゃまた稼げるよ。まあ協力してやるから…」
「ホントに!?」
すがるような顔がキモい…
「うん… でも金は貸さんぞ!」
釘だけはしっかり刺した。
「分かってる!よ〜く分かってる!!」
リュウはなぜか強く返事をした…
料理をあらかた食べ終わり言った。
「よし。道具見せてみな!」
「ジャジャーーン!」とリュウが口で言いながら道具を紙袋から慎重に取り出した。
「…… 」
〇国のドザエモンは、その音楽で、ポッケから道具を出すのだろうか?
出て来た道具を、ひと目見て気付いた。
電波だ…
道具の形状が、ギンパラの電波ゴト道具に酷似していた。
一瞬嫌な気分になった。
頭が、くるくるパーマンになる…
そう思った。
続いてリュウが、もう一つのゴト道具を、シャツの胸ポケットから無造作に取り出して、テーブルに投げ置いた。
どうでも良い…
そんな感じの扱いであった。
初めて見る物ではあったが、僕もソノ道具をチラリと見てゴミだと思った。
あ〜
古い奴ってこっちか…
興味は、完全にスロットの設定を変えると言う道具に集中した。
この時僕が、このゴミのような道具に、強く興味を持ったとしたら、どうなっていただろうか…
変造カードが終わってのちに稼ぐ金額が、10億、20億と上がっていた可能性もある。
しかしゼロで終わっていた可能性も、またある。
絶望の中でなければ僕は、この【ゴミ道具の進化系】を思いつく事がなかったと思えるからである。
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