流転 50

バ〇ラ?

「バ〇ラって?カジノの?」

「うん、そう」

「そんなモンいらんよ。アホか」

リュウが笑いながら言った。

「そう言うと思った!まあ見なよ。自分でやらなくても人に売れば良いんだし」

まあ、話のタネか…

興味が全く無くて、どんな物だったか、うっすらとしか覚えていない。

東京の裏カジノで1番多く出回っていると言うトランプの偽造した物とチップの偽造した物であった。

トランプは特殊な色無しのサングラスで柄の面を見ると数字とマークが分かるように細工されていた。

細工に使われている塗料がまだ新しい物なので業界に知れ渡っていないと言う。

このトランプを店側の人間と組んで店に置いてある全てのトランプと変える。

パチンコの裏ロムやハーネスとやる事がソックリであった。

チップの方は店側のスキをついて換金すると言う。

こちらはパチンコのレシートゴトにソックリであった。

なんだか少し笑えた。

現在では当たり前の悪事になっていてカジノ側も気をつけているので当然出来ない。

リュウが言う。

「どう?売る人いない!?」

「いない。ご苦労さん」

「なんだよ〜 少し捜してよ〜」

「やなこった。警察に言うぞ」

リュウはぶつぶつ文句を言い続けた。

それを無視して焼肉屋へと入って行った。

僕が嫌がる事を知っていて、カジノゴトの道具を持って来ると言う事は、リュウはお金に困っているのではないかと思えた。

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個室に入り料理を注文してから言った。

「お前貧乏か?」

リュウが慌てて言う。

「え!?何!?」

「なんかで金が必要なのか?」

「う、うん…」

「ふ〜ん。雪ちゃんに内緒の話ってソレか?」

「う、うん…」

うざいなこいつ…

「なんの話だよ?言ってみな」

「いや、先に道具見る?」

「見ない。先に話せよ。料理持ってくる奴に見られたくないからな」

そしてリュウは、これまでに自分で稼ぎ出して来たお金の話を始めた。

この時、話を先に聞いた事で僕は大きな失敗をおかす。

いや…

結果から見れば、なるようになったとも言える…

リュウは生活費だけを雪ちゃんに渡して残りのお金は〇国の家族の元に送っていたと言う。

そんな話は、この時初めて聞いた。

リュウの家は決して貧しい家では無いと言う。

どちらかと言えば楽な暮らしをしていた。

自分の兄貴が警察官だったからである。

「は!?お前の兄貴お巡り!?」

リュウが照れくさそうに笑う。

「何してんねんお前… アホか!なんで日本で泥棒すんだ!自分の国でやれ馬鹿!」

リュウは声をあげて笑った。

とんでもねー野郎だ…

ふざけやがって…

そう思った。

〇国で国の仕事についていると言う事は生活面で優位である。

コネが、とてつもない力を持つ国だと、リュウは言った。

警察官の立場は日本とはくらべものにならない。

リュウは日本に来るまでそのコネを使って仲間に優しくしていた。

その為、日本に来てからは、仲間に優遇されている。

ゴトの道具が安く入るのも、そのおかげであった。

「何にもなかったら俺は工場かラーメン屋で朝から晩まで働いていたと思う…」

そう言った。

「似合うぞ。今からでもやれ。ラーメンマン」

「やだよ!お金持ちになりたいんだ!」

「公衆便所に扉の無い国で暮らしてたくせに生意気言うな。金いらねぇだろが。泥水でも飲んでろ」

「俺んトコは扉あるよ!泥水なんか飲めない!」

「は?飲めない?簡単だぞ。コップに泥水すくうだろ。それを口にあてて一気に流し込むんだよ。それでゴクンってすれば、あら不思議!飲めちゃった!ってなる」

「ならない!飲まない!!」

「あっそ…」

料理が全て運ばれて店員に暫く来ないように言った。

僕はお酒はいくらでも飲めたが自分から好んで飲む事は無かった。

リュウもこの時は烏龍茶をすすっていた。

この後僕はリュウの話を黙って聞いた…

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