手下の一人が言った。
「店員なんか瞬間でぶっ飛ばして逃げれば良いんじゃないの?」
意気がるなクズ…
それが出来ないからお前ら全員震えてるんだ…
「お前馬鹿か?店員に手を出して捕まったら変造カードで捕まるより罪が重いぞ。なんのこっちゃだろうが… ちっとは物考えろ… 意気がりなんかいらねぇんだよ。お前、でかい口きいた事を忘れんなよ。お前のグループの受付機役が捕まったらぶち殺すかんな… 分かったな」
意気がった手下の目が、かわいそうになるぐらい泳いだ。
「全員に言っとくぞ。暴力は店員には絶対ふるうな。仲間にふるえ。借金取りにこだわら無くても方法は考えれば必ずあるはずだ」
そして良夫ちゃんを助け出した時の本当の話しをした。
おじいちゃんの頭を張り飛ばす孫作戦…
皆が笑った。
良夫ちゃんは更に照れ笑いになった。
「デッヘッヘ… グフ…」
照れんな!
キモい!
手下達は、少し物を考え始めたようであった。
ひとしきりザワついた後に言った。
「それでも受付機役の奴が店員に取り押さえられる場合はある」
皆が頷く。
「その時は皆で店員を突き飛ばす程度の事はして構わない。でも防犯カメラで録画されてる事は忘れるな。後で警察に言い訳が出来る程度にしておけ。あの客がイジメられてたから助けたって言える程度だぞ。それなら受付機の担当者が捕まってカードの点検をされてなければ裁判までは行かないですむ。多分言い合い程度で帰れるはずだ。それでも逮捕されたら、すぐに弁護士を行かして24時間以内に出してやる。何がなんでも担当者を逃がせ。それが自分達の生き残る唯一の道だと考えろ。分かったか?」
手下の数人が力強く頷いている。
周りを見渡して僕はもう一度確認した。
「分かったのか!!」
皆が弾かれたように頷いた。
「受付機の担当者が、へたくそや、見た目が悪いと危険が増すってのは理解出来たか?出来たなら後でもう一度だけ決めなおせ」
反応良く皆が頷いた。
僕は更に続けた。
「受付機担当者のカードはガードの奴らが少しづつ受付機に通して作れ。一人分を数人掛かりで作るならそれほど大変じゃない。当然その時も皆でガードするんだぞ」
皆が頷いたが質問がないかの確認をした。
質問すら許されない雰囲気になっていたからである。
それは僕の狙う所ではない。
「質問は?」
何も出ない。
出なければ出ないで不安になる。
自分が本当に正しいのかが分からない。
僕が間違えれば、どれほどの手下達が捕まるのだろうか…
不安を無理矢理振り払い手下達に最後の脅しをかける。
彼らはまだ受付機担当者を危険が迫れば見捨てる。
それだけは間違いない。
「質問がないなら罰金の話しをしておく」
手下達の怯えていた顔が一気に僕を敵視する。
笑えるほどにわかりやすい奴らであった。
構わず言った。
「受付機担当者が捕まったら残った奴らから僕が金を取る」
数人が怒った顔で口々に文句を言った。
「なんでですか!?」
「金関係ないでしょ!」
「そこで儲けるってひどくないっすか!?」
僕は笑いながら言った。
「お前ら自分の損害が絡むと随分反応良いな」
文句を言った手下達は戸惑うように押し黙った。
「まあ僕のポッケに入る訳じゃない。捕まった奴の弁護士費用と拘束期間分の慰謝料だ。捕まる時に暴れてなきゃ全部で60万ぐらいだな。だから担当者が捕まったらその金は僕が間違いなく回収する。絶対に逃がさない。身内や友達を脅かしてでも必ず回収する。回収出来ない場合の責任は僕が取る。担当者は安心して仕事をこなせ。ガードは担当者を助けなければ損をする事を知れ」
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