仕方なく、この中途半端な策で手下達を押し切る。
そう決めた。
僕は全員に聞いた。
「なんか受付機に通す良い方法を思い付いた奴は?」
誰もいない…
がっかりする程の馬鹿ばかりである。
「お前らちっとは物考えろや。茹で過ぎた、ゆで卵じゃないんだから」
数人が生意気な口をきいて来る。
「じゃあ、お前は何か方法あんのかよ!」
僕はその手下を睨みながら言った。
「黙れ固茹で… ぶち殺すぞ…」
手下が怯む。
その手下を無視して全員に言った。
「これから先は僕に生意気な口きいたり、僕の言う事が聞けないって奴はすぐクビにする。嫌な奴は帰るなり、掛かって来るなりしろ。分かったか?」
皆の目が泳ぎまくっている。
何を思って目が泳ぐのかは大体分かる。
コイツ頭おかしい…
狂ったのか…
弱そうなくせに…
そんなところであろう。
僕は生意気な口を利いた手下に言った。
「お前帰れよ。僕の言う事は聞けないだろ?いらねぇんだよ」
「いや… そんな積もりじゃないんだ…」
「ふ〜ん… じゃあ大人しくしてろ。分かったか?」
手下は必要以上に怯えた感じで言った。
「分かった。すまん…」
「他に帰りたい奴は?」
全体を見渡す。
皆が僕から目をそらす。
帰ると言った奴はいない。
皆が自分の利益を守る為に僕に従う道を選んだ。
そこに僕の人間性や人を従える力や、腕力などは一切関係無い。
そんな物は、僕には、ほぼ無い。
手下達は、ただ利益の為だけに、プライドを棄てて僕に従う道を選んだ。
そう僕は理解している。
みっとも無い奴らである。
僕には手下達を愛する事が出来なかった。
お金が全てに優先する吐き気を覚える集団である。
中でも自分に1番吐き気を覚えていた。
「良し。じゃあ受付機の通し方を決める。文句は言うな。聞く気はない。分かったか?」
皆が銘々に頷く。
ろくでなしコントロール準備完了。
「適当に明日から一緒に廻る、3、4人のグループを作りな。出来るだけその中に一人は受付機に通す事が苦痛じゃ無い奴を入れるようにしてな。さっき苦痛じゃ無いって手を挙げた奴が入ったグループは利益が出やすいと思うから一緒に廻ってくれるように頼むんだな。時間も遅いから10分で決めてくれ」
一人が理由を聞いて来た。
「理由なんかお前に関係ない。黙って動け愚図…」
人の指図が無ければ意気がる以外何も出来ないへたれどもが…
そう本気で思っていた。
僕は本当に嫌な人間になっていた。
このころから夜はほとんど眠れなくなった。
手下達は僕の言った事に理解を示さず適当に気の合う奴らと小さいグループを作った。
仲良しこよしの集団か?
呆れる以外に無かった。
どうせ、いざとなれば仲間など捨てて逃げるくせに…
お前らの性根など既に見えている…
あてにならない…
だから全てを僕がコントロールしてやる…
自分の利益の為に。
時間が過ぎて手下達に聞いた。
「そのグループで良いのか?」
皆が頷く。
「良し… じゃあその中で誰が受付機にカードを通すか決めてみな」
ざわめきながらも数分後には担当が決まった。
担当になった奴を見ると、どのグループも力関係で1番弱い奴が選ばれているように見える。
それは決して受付機に通しやすい者達では無かった。
犠牲者…
僕には担当に選ばれた奴らがまるで生贄に見えた。
生贄達は何をさせられるのかと不安な顔をしている。
どいつもこいつも…
そんな顔をしているから良いように利用されるんだ…
哀れを乞うような顔をするな…
気持ち悪い…
喰われて消えろ…
お似合いだ…
同情する気持ちは、一切起きなかった。
するだけ無駄だと知っていた。
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