「電話は呼び出しますけど出ませんよ」
またか…
「まだ出てんのかな?」
「さあ…」
仕方なく良夫ちゃんが打っているパチンコ屋へと向かった。
この日が受付機設置後の初めてのカードゴトだったので一軒で15枚ほどのカードしか通していない。
通しやすい店を探す事も目的だったのである。
良夫ちゃんが打っている店では源次がカードを通した。
あまり源次が店内をふらつく事は避けるべきだったので今度は僕が店内の様子を見に行った。
良夫ちゃんは、すぐに見つかった。
ドル箱の山に囲まれている。
なんでだ!
良夫ちゃん不快指数20%。
よく見ると連チャンが終わっている。
普通は即両替で帰る。
待っている僕達もいるのである。
それが僕達に連絡も取らずに一般のお客さんと同じように遊んでいる。
僕が後ろに立って居る事に気付きもしない。
良夫ちゃん不快指数40%。
僕は良夫ちゃんの耳元で言った。
「くらっ!!」
「ひぃ〜」
ひぃ〜じゃねえっての…
外に出るように目とアゴで合図した。
すると良夫ちゃんが僕に顔を寄せて言った。
「車の鍵はタイヤの上です!」
忍法、車消し…
気づかれて居なかった。
意地悪失敗…
良夫ちゃん不快指数60%。
「良いから外来て!」
それだけ言って僕は店を出た。
僕に続いて良夫ちゃんもすぐに店を出て来た。
当然出玉を両替して来ると思ったのだが手ぶらである。
「は?両替は?移動しないの?」
「まだカード三枚有ります」
玉抜きしとけよ…
「あのさ〜 僕ら待ってんの分かんないの?」
良夫ちゃんが驚いた顔で言う。
「電話待ってましたけど」
頭が痛くなって来る…
「電話何回もしてるよ… ちゃんと出ろや…」
良夫ちゃんが不思議な顔をしてポケットから取り出した携帯の画面を見た。
「あ!ホントだ!」
一度も携帯の画面すら見ていないと言う事である。
自分が、小さい小さい人の目には見えない虫けらになった気分である。
良夫ちゃん不快指数…
増減無し…
余りにも日常の事であった。
「僕らカード全部終わったから良夫ちゃんの余ったカード回してくれよ。この後ずっと待ってられないよ。もう結構出てんでしょ?」
良夫ちゃんは得意そうな顔で答えた。
「22回出ました!残りのカードはすぐに玉抜きして来ます!」
良夫ちゃん不快指数80%。
「ダメだよ!僕ら待ってんのだるいっての!この店のカードは僕がやるからもう一軒のカードは源次さんと二人で分けてやりなよ。だいたい同じ時間に帰れるから。そんだけ出てれば充分だろが。どんだけ待たす積もりなんだよ。三人で廻ってるって事をちっとは考えなよ。しまいにはケツ蹴っ飛ばすよ!」
良夫ちゃんは、ふて腐れ気味に納得した…
良夫ちゃんから三枚の変造カードを受け取った。
値段は当然原価である。
源次は源次の値段で僕から買い取った形になる。
彼はまだ僕から原価で変造カードを買い取れる程の活躍をしていない。
付き合いもそれ程長い訳では無い。
これをセコいと理解する人間は、僕の経験上、貧乏人である。
世の中はそんなに甘く無いのである。
何度も言うが僕はケチである。
そこは否定しない。
良夫ちゃんが源次を見ながら口を開いた。
「この人に渡すカードの儲けは私に下さい」
ん?!
一瞬意味が分からなかった。
僕が不思議な顔をしていると良夫ちゃんが更に言った。
「私が買ったカードをこの人に売るんだから儲けは私の物ですよね?」
ん?
良夫ちゃんは変造カードを僕から原価で買っている…
しかし言われて見れば良夫ちゃんの言っている事は正しい。
カードの所有権は良夫ちゃんの物なのである。
この時源次に渡すカードは3枚である。
僕でも良夫ちゃんでも儲けは小銭にしかならない。
どうでも良かったので僕は納得した。
良夫ちゃんは僕よりケチな事を再確認しただけである。
しかし源次が不思議そうな顔をして良夫ちゃんに聞こえないように僕に言った。
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