「良夫さん爆発してました… 15回は出てます」
おのれ…
許さん!!
僕の予想をいつも上回る非常識。
お金が絡む時、良夫ちゃんにリミッターは無い。
苛立ちを抑えて源次に聞いた。
「後どれくらいで終わりそう?」
「確変中ですから分かりませんね… カードも三枚残してます…」
二枚ほどしか使っていない。
引き強…
僕、引き弱…
何者かに愛されている男…
ざけんな!
「もう良いから良夫ちゃんの車乗って来て。鍵は車の運転席側の前タイヤの上に置いてあると思うから」
「え?」
「良夫ちゃんは、一人でパチンコ屋に行く時は、店に鍵持って入らないんだよ。捕まった時困るんだと」
源次は戸惑い気味に言った。
「そうですか…」
何故タイヤの上に鍵を置くのか良夫ちゃんに聞いたがニヤニヤして答えなかった。
意味などきっと無いのであろう。
アホの考える事に意味など無いのである。
真面目に取り合うと疲れてしまう。
「良夫ちゃんに言わないで乗って来ちゃって良いから」
「え!?」
「良いから、良いから。連絡もして来ない罰だから」
鍵をタイヤの上に置いていた車が駐車場から忽然と消える…
忍法…
車消しの術!
慌てて車を探し廻る良夫ちゃんを想像して僕は溜飲を少し下げた。
源次が良夫ちゃんの車で僕を拾い、次の店に着いた。
そのまま源次は、もう一つの店へと移動する。
何の危険も無く、1時間程の時間で僕はカードを使い終わった。
大当たりは単発を一回引いた。
本日三万円分の変造カード使用…
回収金額…
約六千円…
そこから変造カード代金を引くと約四千円の儲け…
パチンコ屋に対する怒りのバロメーター60%充電。
出玉を計量機に流す前に源次に電話をした。
「こっち終わった… そっちどう?」
「最後の一枚で、今確変引きました… 連チャン終わったらすぐ行きます」
「分かった…」
それだけ言って通話ボタンの切るを静かに押した。
パチンコ屋に対する怒りのバロメーター80%充電。
30分もすると源次から電話が来た。
「三回で終わっちゃいました。今から向かいますから」
「分かった…」
本日の源次の儲け…
約一万五千円確定。
本日の僕の儲け…
待ち時間が退屈だった為出玉を計量機に流す事なく使用…
全呑まれ…
変造カード代金分、マイナス、約二千円…
パチンコ屋に対する怒りのバロメーター100%充電完了。
潰す…
見てろ…
いつか日本中の全てのパチンコ屋を潰してやる!
絶対許さん!!
パーチクリン度数100%。
ご臨終です…
チ〜ン!
ゴトをしてマイナスほど悔しい物は無い。
インチキして、なお負けるとは何故だ!
潰れろ!
潰れろ!!
潰れろ!!!
あ!
興奮して我を忘れてしまいました!
関係各位の皆様に慎んでお詫び申し上げ…
ます…ん?
僕は自分の引き弱を責めたりはしない。
自分を責めるぐらいならば嫌いなパチンコ屋を責める。
これが、この当時の、いつわらざる気持ちである。
ふんだくられて自分を責めるほど僕は人間ができていない。
うなだれて店を出た。
何故あんな台に座ったのかと後悔ばかりしている。
勝てて当然、負けたら怨み…
嫌な商売である。
パチンコ屋の中には、どれ程の怨みが渦巻いているのだろう…
迎えの車に乗ったら源次が言った。
「出ました?」
「出ん」
僕の【引き弱伝説】の始まりであった。
玉抜きが出来る程カードを持って行けない事が、僕を負け組へと引きずり落として行く。
同情からなのか黙っている源次に言った。
「良夫ちゃんは?電話した?」
途中一度も良夫ちゃんから連絡は無かった。
当然電話が来るだろうと思っていた。
来たら待たせる…
「車?知らないよ。すぐ行くわ!」
そう言おうと決めていた。
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