源次が到着して、どうなったのかを聞いて来た。
答えづらかったが言わない訳にもいかない。
良夫ちゃんが僕を見て言わないでくれと言う顔をしている。
また喧嘩が始まるか?
ダルイわ…
まあ、罰だ…
僕は源次に全てを話した。
源次は全てを聞いても表情一つ変えなかった。
良夫ちゃんは一人勝手にふて腐れている。
紳士と下男…
僕にはそう見えた。
二人に言った。
「まあ最後はドジったけど良夫ちゃんは凄いよ。普通はあんなに一気に通せないんじゃないかな?やり方によったら上手く行くと思うよ。今日一日は三人で色々試そう」
良夫ちゃんの鼻が膨らんだ…
単純馬鹿…
こうして、この後数件のパチンコ屋を三人で廻った。
僕や源次は一度に受付機に通す枚数が10枚を越えると誰かしら店員に疑われる感じであった。
それでも捕まる事なく、三店舗に渡って、33枚の変造カードを全て受付機に通した。
使える変造カードは、やはり三割ほどだった。
一軒の店で使える変造カードは一万円ほどにしかならない。
使えるカードを使い切れば移動を余儀なくされる。
随分とだるいカードであった。
こののち手下の変造カードをやれる奴のほとんどが一日6万円前後の使えるカードを持ってパチンコ屋を廻るようになって行く。
しかし、ほとんどの奴が一軒で使える金額は、1、2万円と少なくなった。
一軒で使える金額は下がって移動時間は増したが僕達が一日に手にする金額の率は変わらなかった。
パチンコとは何も物を考えず100万円打ち込むと、その7割前後の金額が戻って来る遊戯である。
パチンコ台の中を通ったお金は3割近くが減ると言う事である。
短い期間ではツキの寄り引きがあるので、これ程単純では無いが、長い期間になれば必ずマイナスになる。
そこにツキなど介在しない。
多人数で長い期間やれば、なお正確にそうなる事が分かる。
戻った7割のお金をまたパチンコ台に通せば、そこからまた3割減る。
その繰り返しで負け犬になる。
途中の細かい勝った負けたなど、ただの演出に過ぎない。
パチンコをやる人ならば見た事があるだろうが、営業中のパチンコ屋に隣りの店の店員が来てボードに堂々と何かを書き込んでいる。
一日に、2、3度見かける。
あれは単純にその店の稼動状況を調べているのである。
席に座っている人間の数で、その店の一日の売り上げがおおよそ知れる。
外からでも、正確さは無いが、その店の儲けが見えるのである。
これらのデーター取りは昔からやっている。
多くの店が断り合ってやっている訳では無い。
勝手にやっている。
企業努力?
僕は違うと思う。
ただ人の儲けが気になるだけだろう。
少し日本人とは違う物の考え方のように感じる。
僕なら恥ずかしくて堂々と偵察など出来ない。
みっとも無い奴らである。
蕎麦屋が隣りの蕎麦屋の売り上げを気にして偵察を長年続ければ、それは笑い話しだろう。
現在では形骸化して癖のようにやっているだけだとは思う。
これだけを見ても、決してパチンコ屋はギャンブルをしていない証明である。
リスク無く3割前後のお金を手にする。
僕の常識からすると、これを胴元と呼ぶ。
手にする3割をテラ銭と呼ぶ。
同じ仕組みに、法律がきちんと認めた競馬や競輪や競艇や外国のカジノなどがある事は書いた。
いつからパチンコは、その仲間入りをしたのであろう。
そんな発表を聞いた記憶が僕には無い。
逆に裏カジノや麻雀などを同じ仕組みでやっていて捕まる奴らをテレビ等で目にする。
警察の発表は、賭博は違法で、金銭を直接授受したから捕まえたのだと言う。
ならば換金所を外に設けてパチンコ屋と同じ形態にすれば逮捕は無いと言う事になる。
この国はパチンコを見逃している以上、非合法のギャンブル大国になりうる。
赤信号、皆で渡れば怖くない…
それがまかり通るのであれば裏カジノや麻雀屋も結託すれば良い事になる。
何のギャンブルでもそうなる。
司直が本気でパチンコを国や県や地方自治体の管轄にしようと思えば、やってやれない事は無い。
遅いなどと言う事も無い。
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