この日、集まった手下達は数回に分けて、40人を越えた。
中には婆さんや良夫ちゃんやツルッパもいた。
婆さんに、この変造カードをやらせる積もりはない。
トボケや見た目が救ってくれる段階は既に越えたと思っていた。
しかし婆さんは変造カードの方が良いと言い続ける。
婆さんが裏ロム打ち子の感想を言った。
「私が出した分を知らない人に半分近くも持って行かれるのが納得いきません」
なんでやねん…
しゃーないだろが…
本当に裏ロムを理解しているのか不安になる。
「お母さん、今回だけは黙って僕の言う事を聞きな。本当にお母さんも良夫ちゃんもハツコさんもクビにするよ。カードがやりやすくなったら、またやって良いから。僕が良いって言うまで絶対やったら駄目だよ!」
婆さんはしつこく抵抗したが最後にはどうにか納得した。
長い言い合いの末の事だったので、抵抗を抑え込めたと勘違いして僕は油断した…
当然だった…
なぜ信じたのだろう。
僕は騙される結果になった。
二人は、やはり僕の言う事などあっさり流すのである。
自分の学習能力の無さに笑った…
婆さんは裏ロムの打ち子を続けながら、空いた時間だけ変造カードをやるようになって行った。
婆さんが裏ロムの打ち子を始めて数ヶ月経った頃から、中華ソバの所の裏ロムグループに頼まれる打ち子の数がグンと増えた。
この時期の組織を救った奴らの一人が婆さんだった…
婆さんは裏ロムやハーネスの完璧な打ち子になっていた。
打ち子に究極と言う物があるのなら婆さんがその究極であった。
何をしても店側に全く疑われないのである。
疑われないどころでは無い。
既に他の打ち子が疑われていた店や、データー的に疑われている店の疑いを晴らしたりなどもしている。
そもそも婆さんが打ち子に入っていた店は、取り分6割の裏ロムグループがほとんど出す事を諦めた店である。
打ち子を入れて箱を少しでも積み上げれば店員が張り付くような状況の店ばかりであった。
だから通常では考えられない取り分になっている。
この手の店に行きたがる打ち子は皆無と言って良い。
いくらセット打ちが違法ではないとしても、それはあくまでも建前である。
疑いを店に持たれたら店員に止められて事務所に引っ張り込まれる結果になる。
当然のように出玉は換金して貰えない。
潰して良い店ならば、ゴネまくって打ち続けたり換金は出来るかもしれない。
このゴネると言うのが中々難しい。
決してゴト師として確定される事は言わないようにゴネなければいけない。
へたな事を言って店を完全に潰す事になりでもすれば裏ロムグループに責任を問われる。
責任を問われると言ってもたいしたことではない。
他の店に打ち子に行ける回数を減らされる程度であろう。
それでも回数を減らされる事は安い取り分の打ち子にとって打撃である。
危なくなった店にセットに行く打ち子が減るのは当然であった。
行くとしても店員に顔を覚えられていない最初の一回だけである。
結果、出そうと思えば出せる店が放って置かれる事になる。
そう言う誰もが見捨てた店に婆さんは打ち子に行くのである。
その店の裏ロムが付いている台に若い男や胡散臭い男が座った段階で店側は多少の注意は払うだろう。
ましてや箱を積み上げ始めれば疑いは更に増す。
婆さんは、これら全てを見た目で乗り切るのである。
女性と言うだけで、多少有利な打ち子なのだが、婆さんは、更に犯罪とは無縁に見える死にかけである。
疑う店員など、どこにもいない。
しかし箱が積み上がった以上セットをしているかの確認はされる。
婆さんはセットの中にある不自然な作業の時は全て携帯電話をいじっている。
年寄りがモタモタと携帯をいじる…
普通の事である。
はっきりとしたセット方法を知らない店側に、不自然な動きを見せないセットを見破る事は出来ない。
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