リカちゃんと組む事で少し希望が見え始めた。
しかし、まだまだ動き始めたばかりである。
裏ロムやハーネスを取り付ける為に動きながらも受付機設置後の変造カードは始まって行った。
源次と二人でカードの試し打ちをした帰りに、カード工場のタナカと会って現状を伝えた。
「カード3割ぐらいしか受付機に通らないな。その上使えば最後に必ずエラーが出る」
「3割ですか… あれ?最後に必ずエラーとはどう言う事ですか?」
「ん?どうって?」
「全部のカードを話しの付いた店で使って試したと言う事ですか?」
あ〜 そこか…
タナカは、無理を嫌う、大人しい日本人のゴト師達ばかりを見て来たのだろう。
常識で行くと、エラーが多発する変造カードは返却される。
100枚の変造カードの中に10枚もエラーカードが混ざりでもすれば、ゴト師達は大騒ぎした物である。
しかし、僕の手下の怖がり達にすら、エラーが多少出た程度のカードならば使い切れと僕は言って来ている。
その程度の事が出来て初めて僕は手下と認める。
出来ない奴は、カード代金を高く設定して、僕の近くには寄せ付けない鴨であった。
僕の手下達は例え怖がりと僕が認識していても、そこら辺にいる、稼げない本当にクズなゴト師達とは少し違っていた。
僕達以外の変造カードゴト師達のほとんどが、サンドの鍵すら持っていなかったのではないだろうか。
たとえ鍵は持っていても使わない奴らが多かった。
彼らは、エラーカードを抜いて帰ると言う選択をはなから捨てている。
エラーが出た時に箱を積んでいた場合、カードを抜かないと言う事は、出玉は捨てて逃げなければいけないと言う事である。
顔を覚えられたり、ビデオを見返されたりしている可能性があるので、その後その店には行きづらくもなる。
それでも彼らは、カードも玉も捨てて逃げるのであった。
変造カードを始めて最初にエラーが出た時、彼らはお金よりも安全を選んだのではないだろうか。
一度逃げたら何度でも逃げる…
初エラーの時、僕はサンドの鍵すら無かったが逃げずに変造カードを回収した。
逃げる選択が出来ない、金の亡者で貧乏人であった。
その後もエラーが出た程度の事では逃げていない。
その僕の常識を、手下達にも当然教えた。
僕の手下達は、その辺のゴト師よりも、万事においてハードルの高い常識の中でゴトをしていた。
「いや、話しは付いて無い店だ」
タナカが驚いた顔をしている。
そんな事が出来る訳が無いと言う顔である。
抜き屋で楽に暮らして来ている奴らが僕は嫌いであった。
死ねとさえ思っていた。
逃げずにエラーカードをサンドから抜くと決めれば、技術的に対した事では無い。
問題は、怖がらないかどうかに全て掛かっていた。
ちなみに、変造カードの期間を通じて、エラーカードを鍵を使い抜いている時に捕まった奴は、手下達の中には居なかった。
使用済みの変造カードをタナカに渡した。
カードのパンチ穴を確認したタナカは更に驚いた顔をしている。
「使えるけど、もっと精度を上げてくれ。危な過ぎる。でもエラーより受付機を通る枚数が少ない事の方が問題だよ。受付機を通れば僕達はやって来る」
「え!?これでもやるって言うんですか?」
「やるよ。駄目なの?」
僕には一つ心配な事があった。
この程度の出来の変造カードしかタナカ達が作れない場合の事である。
工場の技術が低いままだと、100枚の変造カードを受け取っても、70枚は未使用で返却する事になる。
しかしタナカ達は、全てのカードに使えると思っている磁気データーを書き込んで来る。
それが使えないで戻される。
その労力をタナカ達が嫌がれば変造カードは販売されない。
それを止める為には、決して僕が出来上がりのカードを恐れる態度を見せてはいけない。
絶対に怖いなどと言ってはいけない…
見知らぬゴト師達が出来ないと言っても、僕は出来ると言い続ける…
どんなに不可能に思えても出来ると言い張る…
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