対策 対応策77

妄爺の店の斜め前にある自動販売機を通り過ぎてコンビニへと向かう。

リカちゃんは今、損得の計算をしている。

それと同時に怒ってもいる。

当然、僕に対しての怒りである。

損得を冷静にリカちゃんが計算すれば僕と組む事が最良だと気付く。

彼女一人では、どう考えても無理なのである。

疑問があれば、いつも僕に相談しに来ていたのだから…

周りにブレーンになる奴がいない。

そう言う事であろう。

しかし僕と組むと頭が判断したとしても、感情がそれを許さない。

怒りが僕を拒絶する。

話しを上手くまとめる為には、リカちゃんの怒りを解かなければいけない。

その為に僕はコンビニへと向かう。

人は怒って後、その怒りを20分間持続させる。

怒りを抑えさせる最良の方法は、時間を置くと言う事である。

僕はゆっくりとコンビニへと歩いた。

道々色々な事を考えた。

随分リカちゃんにひどい事を言ったと思っていた。

彼女は、直接では無いが人殺しに関わった事を後悔している様に感じた。

人なんか殺していないと叫んだ時の彼女の顔は苦渋に満ちていた。

見開かれた大きな目の中には、後悔と悔悟が溢れている様に見えた。

人を殺せば苦しみを背負うのであろう。

だから目から光が消える時があるのではないだろうか。

許しは出来ないが二度とリカちゃんに人殺しと言う事はやめようと思った。

少し彼女が、かわいそうな気がした。

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コンビニでパチンコ雑誌をパラパラめくり時間を潰す。

僕はゴトの期間を通じてパチンコやスロットの攻略雑誌などを買った事が無い。

手下が買った奴を余程暇な時にパラパラ見るだけである。

腕の劣る手下達は攻略雑誌を漁るように買っていたが、腕のたつ手下達は誰も攻略雑誌を買っていない様であった。

ゴトがパチンコやスロットとは関係無い事を僕も腕のたつ手下達も、きちんと理解していた。

余計な知識はいらない。

頼る物は、データーや理屈では無く、自分の心臓や、ツキだと僕は感じていた。

当たりハズレは、時の運に任せていた。

パチンコとは、時の運任せの下らない遊びだと僕は思っている。

なぜ人生を壊す程イレ込む人々がいるのか不思議であった。

攻略雑誌を見る事で勝ち組に入れるのであれば負ける人はいない。

その程度の事も分からなくさせる程、パチンコとは頭を狂わせるのであろうか。

ゴトを辞めたら絶対にパチンコやスロットなどやらない様にしようと思った。

引きの弱さも、そう思わせる原因ではあった。

温かいコーヒーと冷たいコーヒーを一本づつ買いコンビニを出た。

コーヒーを買いに出てから時間は30分ほど過ぎている。

姫のご機嫌いかがかな…

そう思った。

妄爺の店に戻ると、リカちゃんは椅子に座りぼんやりしていた。

「遅いよ!どこ行ってたの?」

「コンビニ。まだ誰も来ない?」

「来ないよ」

怒りは少しおさまっているようであった。

「あったかいのと冷たいのどっちが良い?」

僕をジロッと見てリカちゃんが答える。

「あったかいの!」

ほらよっと言って、冷たい缶コーヒーを投げた。

彼女は不細工にキャッチした。

「冷たいじゃん!」

僕は笑いながら温かい缶コーヒーを差し出した。

「ごめんな。さっき言い過ぎた」

「良いよ!アンタの言った事なんて気にしてないから!」

「そうか…」

やはり大分言い過ぎたんだと理解した。

リカちゃんが言う。

「組むのは良いよ。でも折半は嫌!絶対多いよ!」

「多いか?そうか… でも僕の取り分は2割だぞ。打ち子に3割渡すんだから」

「え?そうなの?」

「うん、それで良い。それで煩わしい事は全部僕がやる。リカちゃんは店員に払う分と、話しをある程度つけるトコまでやってくれたら良い。それなら楽だし良いだろ?みんなの仕事を確保してやらないといけないんだ。全員辞めちまうよ。頼むよ」

「最初からそう言えば良いじゃない…」

アホか…

最初からそう言ったら、それが僕の弱みになるんだ…

お前が折れた事を確信したから言ったんだ…

お前は僕に負けたんだ…

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