「まあな、わざとかも知れないな。でも証拠がねぇんだよ」
中華ソバが、ガタガタ言った。
「黙れ、最後まで聞け!」
渋々、中華ソバが黙り込む。
「わざとだろうが、わざとじゃ無かろうが関係ねぇんだよ。お前は上の奴に良夫ちゃんがボケ老人だったって言えば良いんだ。なんか言われたら、最後の方で出た当たりが連チャンして、慌てて単発のセットを掛けたけど裏ロムにも馴れて無かったから失敗し続けたみたいだって言え。パニックで電話すんのも忘れたらしいって言え。嘘だって言う証拠は無いんだ。それで通る。当然、取り分はわざとじゃ無いんだから20回分の額で良い。浮いた金は好きにしろよ」
「そんなの通らないヨ…」
「お前が笑ってボケ老人は困るって何回も言いながら話せば通る。少しでもお前がヤバイ状況になったら僕に言って来い。僕がソイツと話す。間違っても良夫ちゃんに手を出す様な事はさせんなよ。出来れば喧嘩はしたくない。でも売られたら買う。たったの数万で喧嘩なんかだるいぞ。上手く話せよ… お前がどう思おうとも、わざとやった訳じゃないんだからな」
「分かったヨ… 話してみル。良夫さんは今日でクビでも良いカ?」
「向こうがそう言うなら仕方ない。それで良い」
中華ソバを丸め込む事に成功した。
彼さえ黙らせれば、それ程大きな問題になる事では無い。
上と言われる裏ロムグループまで話しが行くとは中華ソバと話していて思えなかった。
店にバレて潰れでもしなければ小さい事である。
中華ソバは、ただゴネて見せたかっただけであろう。
ロクデナシ達を数多く見て来た僕に駆け引きは無駄である。
浮いた18回分の取り分は中華ソバのポケットの中に納まるだろう。
良夫ちゃんをクビなどと言っていたが、それもどうだか分からない。
人が必要ならば、勿体振りながらも、これからも使うなどと言って来るだろう。
それが僕の狙いである。
その言葉を引き出せなければ仕事が減る。
中華ソバに、ヤキモキはさせたが、金銭的に損はさせていない。
彼の顔も潰していない。
必ず良夫ちゃんをまた使うと言って来ると思っていた。
この後、僕の予測は当たった。
良夫ちゃんは4万円程を受け取り黙って帰らされた。
そして中華ソバから連絡が入った。
「上手く話したヨ!良夫さんも、まだ使って良いって言われたシ!」
アホくさい…
婆さんに比べたら中華ソバなど三流にもいかない大根役者であった。
「そうか… 悪かったな。でも良夫ちゃんは、もう行かせない。他の大人しい奴を探すよ。それで良いか?」
中華ソバは、分かったと言った。
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