カマに引っ掛かって、言い抜けが出来ない事に良夫ちゃんは気付いたようであった。
「黙ってたんじゃ分からない。無理はしないでくれって言ったよね。悪いと思うなら僕に謝った方が良い」
謝らなければ助ける事はやめようと決めていた。
勘忍袋の緒は切れそうであった。
変造カードが終わった後の先行きが、いつも不安であった。
対処によっては仕事量が確実に減る。
この先は、中華ソバを言いくるめなければいけない。
良夫ちゃんが自分で考えた言い訳や嘘では多分通らない。
突っ込まれたらボロが出る。
突っ込みようの無い嘘を付かせるしか無かった。
その為には僕に謝らせて嘘を一度全てリセットさせる必要がある。
1番重要な事は、良夫ちゃんの取り分が減る事を納得させる事であった。
良夫ちゃんが観念した様に言った。
「すいません、やりました。もうしません」
もうしません?
それが嘘だ…
あんたは何度でもやる。
チャンスでも無いのにチャンスと勘違いして何度でもやる…
アホだから。
反省の色のこもらない謝罪でも謝罪は謝罪である。
殴ってウサを晴らした所で何も良い事は無い。
暴力は、間違って殺しても構わない相手にしか振るわない。
付き合いの長さが全てに目をつむらせる。
僕は出来ない我慢をした。
「中華ソバ達がキレてるから言い訳は失敗出来ない。どう言う出し方をしろって言われたのか細かく説明して」
「20回出せって言われました。多少出過ぎても良いから連チャン終わったらすぐやめろって…」
「それだけ?」
「はい」
「噴き過ぎたら途中で電話しろって言われてないの?」
「あ、言われました!」
全部言えよ…
てか本気で言われた条件忘れてただろ…
その後も中華ソバ達が打ち子を入れるにあたって言ったであろう条件をいくつか良夫ちゃんに突き付けたが何も無かった。
それだけ…?
いい加減だな…
裏ロムグループは、犯罪者を信じ過ぎている様に感じた。
だから良夫ちゃんはチャンスと勘違いしたのであろう。
言い抜けが出来る穴は、いくらでもあった。
言い訳を教えた。
「中華ソバんトコの打ち子に20回越えてからのセットを見られてるかもしれないから、連チャンを止めようとして単発のセットを何回か試したけど止まりませんでしたって言いな。電話をなんでしないか聞かれたら忘れてたで良いから。それ以外の事を聞かれたら、次から気をつけるって言いな。あとは僕が話しとくから。分かった?」
「はい、分かりました」
当然復唱させた。
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