良夫ちゃんは裏ロムの打ち子を始めて三日目に38回の大当たりを引いた。
予定より18回多い。
通常は有り得ない。
そこまで連チャンが続けば裏ロムグループに途中で連絡を入れて、単発のセットを掛けて当たりを止めるかの確認をする。
中華ソバから僕に連絡が入った。
「良夫さんが大当たり30回ぐらい越えて出してるヨ!止めてヨ!」
通常、裏ロムやハーネスが取り付けられた店には見張りと言う者がいる。
店側の人間と話しを付けて裏ロムなどを取り付けている場合は店側の人間が見張りである。
忍び込んだりして取り付けた場合は裏ロムグループの人間が定期的に店内を見回ったり、セットを掛けている打ち子がその役割を果たす。
この時の良夫ちゃんが30回を越えて大当たりを引いている事に気が付いたのは、同じ店に良夫ちゃんとは時間差でセットに行った打ち子であった。
その打ち子が、良夫ちゃんの異常に積み上げられたドル箱に気付いた。
すぐに裏ロムグループを経由して中華ソバから僕に連絡が入る結果になった。
30回を越えて良夫ちゃんが出していると聞いた時僕は思った。
わざとだ…
絶対だ!
間違いねー!!
確信したが口には出さない。
出せばその時点で終わりか喧嘩になる。
とりあえず中華ソバに当たり前の事を言った。
「電話するなり、なんなりしてソッチで止めろよ。別段わざとじゃねーだろ。噴く時だってあんだから仕方ねーよ」
「だって良夫さん連絡もして来ないし電話にも出ないヨ!」
じじい…
それもわざとか?
連絡をしない事も、電話に出ない事も、いつもの事である。
「少し待て。電話してみる」
そう言って僕は電話を切った。
やってしまった事は仕方がない…
頭を切り替えた。
僕には、良夫ちゃんの共犯になる事しか、残された道がなくなっていた。
すぐに良夫ちゃんに電話を入れた。
わざと電話に出ないのでなければ、良夫ちゃんは本当に着信に気付いていない可能性が高い。
携帯をズボンのポケットに入れていると振動を感じないといつも言っていた。
僕が良夫ちゃんに電話に必ず出て欲しい時は、携帯の置き場所も指示していた。
指示しなければ良夫ちゃんは携帯をズボンのポケットにしまう。
しつこく鳴らせば気付いて出る時はあった。
電話に出る気が無ければ電源を切るなといくら言っても、いつも平気で切っていた。
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