対策 対応策53

は?

何言ってんだ?

意味がよく分からなかった。

「良夫ちゃんに教わったの?」

「はい。リュウさんにも前に良夫ちゃんが100回出してる時、教わりました」

あ、あの時か…

リュウが、理解しない婆さんに、車の中で、しつこくゴニョゴニョ言っていた。

しかし教えたのが良夫ちゃんやリュウでは更に不安になる。

良夫ちゃんはアホだし、あの頃のリュウは、まだカタコトである。

どんな事を覚えたのか婆さんに聞いた。

驚く事に婆さんは、ハーネスゴトの仕組みや、サンゾクで良夫ちゃんがやったセットまでを全て暗記していた。

え?

ええっ!?

ババア…

普段はホントにボケた振りなのか…?

僕は婆さんを呆然と見つめた。

全てを正確に話した婆さんが僕に言った。

「間違ってますか?」

「いや… だいたい合ってる…」

「だいたいですか?」

だいたいでは無い。

合っている。

良夫ちゃんやリュウが、教え無かったであろう部分が抜けているだけである。

「いや、完全に合ってる。裏ロムはセットが少し違うだけだよ。セットはやる台によって違うから一々覚えるしかないんだ…」

婆さんは、満面に笑いを浮かべて言った。

「そうですか。なら覚えます」

シワシワの婆さんが、人間ではない何物かに見えた。

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理屈やセットは、何度も反復すれば誰でも覚えられる。

婆さんは時間を掛けて必死に記憶したのであろう。

それは、80才を越えている事を思えば凄い事である。

しかしセットには技術面がある。

時計を見ずに時間を計る…

それが出来なければ暗記したセット方法は店では使えない。

「時計見ないで時間計る練習はした?」

「しました。出来ます」

マジでか…

ババアのくせに…

良夫ちゃんの親のくせに…

はっと気づいた。

「目、つむんの?」

「つむりません」

体内時計テストが始まる。

「40秒経ったと思ったら手を挙げて。はい、スタート!」

35秒経過…

40秒経過…

41…

42…

43…

44…

手が挙がった。

出来んじゃん!!

プラスマイナス10秒程なら何の問題も無い。

続いて1分のテストをした。

10秒程遅れたが、こちらは、プラスマイナス20秒程のズレが許される。

完璧であった。

急いで婆さんと良夫ちゃんを閉店30分程前のパチンコ屋に連れて行った。

僕はあくまでも二人を信用しなかった。

いや…

出来なかった。

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