婆さんが捕まるか、良夫ちゃんが警察に逮捕されるまでは放っておこうと思っていたが、その前に婆さんの体力が尽きそうであった。
死が先に来る様な気がした。
車の中で休憩を取る時間が日に日に長くなって来たのである。
それを婆さんは、精神力で乗り切ろうしていた。
「お母さんにあんまり無理させない方が良いよ。死ぬだろ… 僕が言っても聞かないから良夫ちゃんがちゃんと話しなよ」
「私が言っても怒ります。手も出ます…」
手って…?
余り言うと強烈なビンタが飛ぶと言う。
どんだけやねん…
良夫ちゃん達に変造カードを卸すのをやめようと考えたが、婆さん達には他のカード屋の知り合いが居るのである。
この頃になると僕は婆さん達に儲けを乗せないカードを売っていた。
カードの値段は僕と同じなのである。
そのかわりにカードの受け取りや受け渡しなどを頼んでいた。
他の変造カード屋から婆さん達がカードを仕入れた場合、値段は手下達より高く取引されるだろう。
それでも二人は変造カードを買ってやるだろう。
だろうでは無い…
やる!
クビにする事が、婆さんの儲けを奪い、命を縮めさせる様な気がしていた。
婆さんが自分で辞めると言わないと、止められない状況であった。
裏ロムの打ち子の話しを婆さんにもした。
「ハツコさんと二人で裏ロムやれば良いんじゃない?ハツコさんも一緒に行ける様に話すから。良夫ちゃんには今まで通りカードで稼いで貰えば良いだろ。変造カードはじきに終わるし、その前に新しい楽なゴトに移っておいた方が良いよ」
「お断りします。カードが終わったらお願いします」
都合の良いババアである。
「変造カード終わってからじゃ人が溢れるから移れないよ。今がチャンスなんだよ」
「なら結構です」
くそババア…
好きにしろ!
お手上げであった。
仕方なく中華ソバに断りの電話を入れた。
「やっぱり取り分が安いから無理だな。カードが終わったらやるって言ってるけど」
中華ソバが驚く事を言った。
「6割渡せるヨ…」
え!?
常識では有り得ない取り分である。
裏ロムやハーネスには、取り付けた人間が最低1人はいる。
パチンコ屋に忍び込んで付けた場合がソレである。
パチンコ屋の店長クラスの人間と話しを付けて取り付けた場合は、話しを付けた人間と、店長の2人になる。
通常は、更に多くの人間が絡む場合が多い。
どの取り付け方にせよ、6割打ち子に渡すと言う事は、打ち子の為に裏ロムやハーネスを取り付けた様な物であった。
続いて中華ソバは当然の様に条件を言った。
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