僕に追い付く為に、無理矢理な、玉抜きにつぐ玉抜きを、もの凄い顔をして始めるのである。
僕はソレを見て縮み上がる…
ヒィッ!
てなる。
二人には勝ってはいけない…
そう思う。
中華ソバは、婆さん達の取り分を、全て込みの4割だと言った。
普通の打ち子が貰う金額の最高値である。
最高値だとしても、二人が裏ロムの打ち子をやるとは思えなかった。
この打ち子は、一日10万円程出すと言う。
取り分が、一人4万円にしかならない。
その上、拘束時間も長かった。
一気に出すのは店側の疑いを招くので、昼頃から打ち出して、出したり飲ませたりを繰り返し、夜7時頃に終わらせる様に打つと言う。
ソレを聞いた時に、二人はやらないだろうと確信した。
安全な安いゴトより、危険でも、儲けがでかいゴトを二人は確実に選ぶ。
「まあ、一応聞いてみるよ…」
僕は中華ソバにそう答えた。
さっそく良夫ちゃんに電話を掛けた。
出来れば婆さんだけでも儲けは減るが、安全なゴトに移行させたかった。
中華ソバの知り合いの裏ロムゴトグループは、でかいと言う。
見た目が、まさかの婆さんは、重宝がられる筈である。
良夫ちゃんに中華ソバから聞いた裏ロムゴトの条件をそのまま話した。
「は?やりませんよ」
間髪入れずの答えであった。
分かっちゃいたけど、少しは考えてくれよ…
ボケじじぃ…
この頃、僕の予想では、婆さんの年齢は80に届いていた。
良夫ちゃんに、婆さんが幾つか聞いたが、知らないと言う。
「昔から30才だって言ってます。歳取りません」
んな訳あるか!
妖怪か!?
シワシワやんけ!!
二人が口にする言葉は、冗談か本気なのかの区別が付けづらい…
良夫ちゃんが捕まり、これまでに婆さんが事務所に乗り込み、二回助け出している。
その二回目の時に僕は婆さんにゴトを辞めてくれと真剣に頼んだ。
「なんでそんなに金がいるんだよ!」
良夫ちゃんには内緒にしてくれと言って婆さんが語った理由には、昭和初期の激動の時代をを生き抜いて来た人達が持つ、強い矜持があった。
「捕まっても、死んでも構いません」
人に頼らず自分でカタを付けたいと言う婆さんに、僕はゴトを辞めろとは言えなくなった。
捕まるか、死ぬまでやれば良いと思った。
婆さんの住まいは良夫ちゃん家族とは別居なので、あいも変わらず団地の狭い一室であった。
彼女が贅沢している姿を僕は見た事が無い。
コメント
ここの婆さんが良夫ちゃんに内緒にしているお金が必要な理由ってこの後語られるんでしょうか?
まつおさんこんばんは。コメントありがとうございます!
スミマセン、僕がコメント見るのが遅くなってしまって。
語られます!