「じゃあ、明日の朝また… これから金貰いに行ってきます」
それだけ言って、今度は伝票を持たずに席を立った。
交渉が終わった以上、クソどもに奢る気は失せていた。
ファミレスを出て、車に乗り込もうとしているとゴキブリが追い掛けて来た。
少し慌てているように見える。
「ちょっと二人でお茶飲もうぜ!」
ウザい…
どうせ取り分の話しだろ…
「コヅカイならやらねぇぞ」
ゴキブリが驚いた顔で言う。
「なんでだよ!兄貴と繋いだだろ!」
「繋いだ?ふざけんなよ。僕の味方しろって言ったよな… 兄貴の為の話しになっちゃったじゃねーかよ。あ?!」
ゴキブリが得意な顔で言う。
「仕方ねぇじゃねーかよ。兄貴は切れ者なんだからよ!お前も頑張った方だよ!」
「ざけんな。コヅカイ欲しけりゃ兄貴に貰え。じゃーな!」
車に乗り込んだ。
助手席の扉をゴキブリが慌ててガチャガチャやっている。
開かない。
「おい!おい!待てよ!くれよ!」
叫んでいる。
笑える…
僕にタカると痛い目見せちゃうよ…
窓だけ開けて言った。
「いくら欲しいんだ?100円か?200円か?」
「10万だろ!?」
アホか?
「有り得ないな… 5万なら考えといてやるよ。明日な」
それだけ言って窓を閉めて車を発進させた。
その日、近くのファミレスで待っていた源次に会って、借金が300万円で、全て無くなる事を伝えた。
源次の見開かれた目に涙が溜まっていく。
うわっ!
泣くじゃん!
キモッ!
僕は慌てて言った。
「これから機械関係で僕が分からない事は、全部源次さんにやって貰うから!当然、ただ働きね!言うなれば奴隷!分かった?!」
源次は、涙を堪えて、ひと言言った。
「分かりました」
次の日の朝1番に、知り合いの弁護士を連れ出して、源次と三人で、ダニの待つファミレスへ向かった。
別段、弁護士など要らないが、何かあれば、すぐに弁護士が動くと言う事を、ダニに分からせておきたかっただけである。
ダニ達は、源次を見るなり、薄笑いを浮かべて軽口を叩いている。
二人の言っている事など無視して聞いた。
「書類全部揃ってますか?」
ダニが答える。
「おー 揃ってるぞ。金は?」
「貰って来ました。書類見せて下さい」
ダニが大きめの茶封筒を僕の目の前に放って寄越す。
てめぇ…
マジで地獄見せてやろうか…
僕は1円だってお前に払いたくは無いんだ…
堪えて放られた茶封筒を弁護士に渡す。
ダニが怪訝な顔をしている。
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