しかし源次に、この方法は無理である。
源次は既に、どっぷりとゴトにつかっている。
警察に助けを求めづらい人間になってしまった。
下手な事をしてダニ達を刺激すれば、いくらゴトが現行犯とは言え、源次も警察の呼び出しを受ける可能性がある。
それはそれでウザい。
今後を考えると、なるべく警察には尻尾を掴まれたくはない。
多少のお金が掛かるのは仕方がないと考えていた。
源次の残りの借金は1600万円。
ダニに渡すお金は、元金分の400万円もあれば良い様な気がする。
いや…
なるべくもっと安く済ませる…
ダニが、間抜けな事に期待した。
指定されたファミレスへ着くとダニとゴキブリが既に待っていた。
待ち合わせの時間には、まだ2分程ある。
ヤクザは、基本、時間にうるさい。
僕は時間など、どうでも良い。
はなから相入れないのである。
時間が守れるようならば僕はゴト師など確実にやっていない。
そこが守れなかったから僕は世の中から弾き出たのである。
それは、この時も余り変わっていなかった。
この時はタマタマ早く着いただけである。
ヤクザごときを相手にする為に、タマタマとは言え、時間通りに着いてしまった事に、少しイラついた。
ファミレスの奥の席でゴキブリが手を上げて僕を手招きしている。
ゴキブリの横には、余りヤクザらしく見えない、大人しそうな30代中頃の男が座っていた。
コイツがキレやすいのか?
見た目からは想像出来なかった。
「こんばんは」
それだけ言って僕は席についた。
挨拶が出来ない訳では無い。
する気が無いだけである。
僕がへりくだる理由は、どこにも無い。
ゴキブリが慌てたように言った。
「遅かったな!」
「嘘こけ、遅く無いだろ。これでも頑張ったんだよ」
ダニが笑いながら口を開いた。
「遅くないよな。時間通りだ」
やばい…
馬鹿じゃない…
見た目が大人しいのにヤクザをやっている事自体が才能である。
更には、素人と接する時に脅しから入らない。
自分に自信があるのであろう。
勝てるか…?
不安がヨぎる。
軽い自己紹介と、世間話しをした後で、源次の話しになった。
「そうか〜 ゴトも厳しいのか〜 源次を使ってくれて結構助かってたんだけどな」
「まだ借金ありますよね?一応、源次さんに聞いて来たけど」
「まだ有るな。今日は、なんかソノ話しなんだろ?」
「はい。源次さんはゴト辞めたら借金返せるんですか?なんかやらせる事あります?」
「今んとこ無いな」
コメント