消えた150万円は、間に入った人間のポケットの中である。
大体が2年契約であった。
ズサンな契約だと偽装を受けた方の人間は損をする。
相手が2年で離婚届けを出さずにバックレるのである。
逃げられた場合、失踪届けを出して離婚を認めて貰うまでに、更に数年掛かる事になる。
受ける側の人間は、契約が切れる度に、2度、3度と偽装結婚をする事が多い様であった。
現在では偽装結婚に対して厳しい対応が為されている。
容易では無い。
これらの戸籍の売り買いは様々な物があった。
変造カードゴトが出来なく為って、他の悪さも出来なく為った奴らが多数絡んで行くようになる。
僕の元を去った手下の中にも数人居たが、みっともない話しである。
たった、数十万円で、見知らぬ外国人が戸籍に消えづらい傷を付けるのである。
へたをしたら、一生物である。
変造カードゴトが終わり、他の危険な悪事にも移れない手下達は、自分の戸籍を切り売りしていた。
最後は誰かに利用されてゴミクズ扱いを受ける。
それが、ゴト師の成れの果ての、一つの形であった。
彼らの多くが、現在もツライ現実を生きている。
幸せに暮らしている奴を僕は知らない。
タナカは、くだらない冗談を交えて世間話しを始めた。
まるで日本人の様な発音の日本語でタナカは喋る。
結婚が偽装では無く、本物かもしれないと少し考え直した。
昨日行った、銀座の高級クラブの女の話しや、驚く程高い焼肉屋の肉の話し…
自分が乗っている高級車の話し…
着ているスーツの値段…
時計の値段…
クソガキ!
いい加減にしろっ!!
お前の成金話しに付き合う程、暇じゃねー!!
「おい、タナベさんさ〜そんな事、どうでも良いからカードがどうなって行くか説明しなよ…」
「いや、田中です」
知ってるわ…
お前に興味が無いだけだ…
「僕達が何をすればカードがすぐ出来る?ある程度、出来るか出来ないかの説明がないと、データー取りはだるいんだけど。てか出来そうなの?」
「データーさえキチンと取って貰えば出来ますよ」
自信満々にタナカは言って封筒を10枚程出した。
封筒の中身を一つづつ出していく。
全てがパッキーカードの様に見えるが、中には見た事が無い、デザインの白いカードもあった。
一つの封筒には、カードが、10枚程づつ入っている。
タナカが言う。
「これ全部、受付機に通して来て貰いたいんです。封筒とカードに番号を書いてありますから順番に。出来ますか?」
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