受付機設置の前日になっても、スネ夫の店での荒稼ぎは、目立つ問題も無く順調であった。
聞き取り調査した店の数件は、変造カードゴト師に対しての対応を変えて来たが、捕まるまでには到らず、皆逃げ切っている。
最後まで変造カードを見逃した店の中には、玉抜きを僕達に奨めて来る店も数件あった。
そう言う店を、皆で分ける様に順繰りに廻った。
三ヶ月で手下一人が手にする金額は軽く一千万円を越えた。
この三ヶ月は、皆が真面目にゴトをした。
自分達は、ゴトが、これで最後だと言う事を、渋々ながらも理解している様であった。
この後、更に変造カードゴトは続いて行くが、彼らの多くが、このゴトがやはり最後になって行った。
しかし、最後の荒稼ぎが出来た彼らは、まだましであった。
最後の荒稼ぎを拒否して席を立った、少し怖がりな手下達は、まとまったお金を稼ぐ事無く、ゴト師を辞めて行く結果になった。
僕は、彼らに救いの手を差し延べる事は、もうしなかった。
彼らが選んだ道であり、自業自得だと思っていた。
そして彼らの多くが他の犯罪へと移って行く結果になった。
まだ稼いでいない…
そう言う事であろう。
馬鹿な奴らである…
受付機設置は全国的に、一気に行われた訳では無い。
地域ごとに数日のタイムラグがあった。
スネ夫の統轄する三軒は同時期に設置運用されたが、その数日前から、他県では、受付機は稼働していた。
僕達には、受付機が稼働するまで、誰にも分からない、一つの疑問があった。
他店から持ち込まれる、本物のパッキーカードは受付機を通せば、その店でも使える。
これは発表の通りであろう。
ならば、変造カードを受付機に通せば、どうなるのであろうか?
使えるのでは?
「まさか… そんなアホな」
皆が口を揃える。
僕も全く同意見である。
カード会社が、威信と巨額を掛けて、全国のパチンコ屋に設置した受付機である。
いくらなんでもソコまでは抜けていないであろう。
もしも使えるのであれば話しの付いた店ならば簡単に出来てしまう。
店員が変造カードを受付機に通せば良いのである。
手下達が言う。
「出来たら良いですね!」
夢見んな…
「普通に無理だろ…」
僕は苦笑いで答えた。
しかし、一応、変造カード工場に聞いた。
既に他県では、受付機が稼働して数日経っていた。
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