僕が最初にゴトに手を染めた時の目標は、一千万円稼ぎ出す事であった。
それ以上の欲望は全く無かった。
一千万円稼ぐなど、不可能だと思っていた。
それだけ稼げたら、足を洗おう…
でも、きっと、すぐに捕まる…
そう思っていた。
それが、たいして危険な目にもあわずに、短い期間でアッサリと達成された。
辞める事を辞めていた。
五千万円稼いだら辞めよう…
アッサリ達成された。
一度捕まるまで続けよう…
しかし捕まらない。
その内、見知らぬ奴らと一緒にゴトをする様になっていた。
なぜか僕が指示をしている。
簡単に辞めるとは言えなくなった。
言うのは簡単だったが言わなかった。
変な責任感の様な物が目覚め始めていた。
そして僕は、辞め時を見失って行った。
次の犯罪に手を出せば、また同じ道を辿る。
一度ゴト以外の犯罪に手を出せば、もう歯止めは効かない。
どんな汚い事でも、多分僕は、やるようになる。
確実に悪党の頂点を目指そうとする。
目指しはするが無理であろう。
ヤクザに酷い目にあうか、警察に捕まり重い刑を受けるか…
どちらかの結末になる様な気がしていた。
人が決めたルールなど、どうでも良いが、自分が決めたルールは意地でも守ろうと決めた。
あらためて、ゴト以外の悪事は、やらないと頑なに自分に誓った。
しかし、手下達を、そのルールで縛り付ける事は、出来ない状況に為って行く。
受付機が設置されたら、稼げなく為る手下が多数出る事が予測出来たからである。
「クレジットカードの買い物、なんか金になるらしいですよ。まだ安全らしいし。友達がやってるけど結構金になってます」
数人の手下が、僕に同じ様な事を言って来る様になった。
「そうか… やりたいなら止めないぞ。僕は関わるのも嫌だ。自由にしろ。ただ、一度僕の所から抜けたら、戻る事はさせない。抜けるかどうかは自分で決めろ。嫌がる奴を付き合わせるのは絶対やめろ。無理矢理引き抜いたのが僕に知れたら覚悟しろ。その時は、お前は敵だ。分かったな?」
抜ける奴は、何を言っても抜けるだろうと思っていた。
それで良い…
変造カードが終われば、僕が全員の面倒を見る事は出来やしない…
自分の器量の無さを知った。
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