まさか、この女を、俺の可愛い子猫ちゃんと言っていた訳では無いであろう。
部屋の中に、ガサ入れに入られた場合、見つかっては、まずい物がある…
そう理解した。
しかし女が居る以上、押し入る訳には行かない。
僕が送り込む弁護士は、二日後である。
すぐに事情を知る手段が無かった。
諦めようと思った。
僕の勘が言う。
カードよりも、ヤバイ物がある…
ガサ入れで新たな変造カードが見つかっても、この頃は、まだ罪は増さない。
それは小池も知っている。
段々、関わる事が危険に思えて来た。
やっぱり見捨てよう…
帰ろうと思い、女に挨拶をした。
すると女が言った。
「あ!思い出した!猫を預かりたいって言って来た人に渡せって言われてた金庫がある!ちょっと待ってて!」
ウザい…
思い出すな…
仕方なく待った。
少しすると女が小振りな手提げ金庫を持って戻って来た。
金庫を受け取る。
結構重い。
「鍵は?」
「鍵は池君がいつも持ってたから家には無いよ」
なおダルい。
女の携帯番号を聞いて小池の家を後にした。
女に聞かれた僕の携帯番号は、適当な番号を教え、小池が捕まっている事は言わないままにした。
金庫の中身は、イケナイ薬の様な気がした。
小池が出来る悪さと言えば、何かの売人ぐらいしか思い浮かばない。
金庫を開ける事に決めた。
中身によっては、保管や対応の方法が変わる。
近くにあったビジネスホテルに車を入れる。
車の工具入れから常備しているトンカチとドライバーを抜いた。
部屋に入り、金庫の鍵を一撃で叩き壊す。
金庫の仕分けされた一角に、見慣れた変造カードが、100枚ほど、輪ゴムで巻かれて収まっていた。
その他の部分には、青とピンクと、黄色い薬の錠剤が、色事にビニール袋に入れられ詰まっていた。
あの、馬鹿…
自分が使う為では無く、明らかに売人である。
僕には、この錠剤に見覚えがあった…
「これ、1錠、1500円で卸すから売らないか?末端だと、5000円から15000円で買うぜ。色によっては値段も、キきかたも微妙に違うんだけどさ」
それまで笑いながら話していた僕は、意識して、態度をガラリと変えた。
「テメェ、僕の手下達に、このゴミクズを1錠でも売り付けてみろ… そんときゃ殺すぞ…」
そう言って、薬の売人のチンピラヤクザを突っぱねたのが半年ほど前であった。
手足が震えて、頭がパーになったゴト師など使い物にならない。
一瞬険悪なムードになったが、その後ソイツが僕の周りに現れる事はなくなった。
その時に見た錠剤と同じ錠剤が、金庫の中にはあった。
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