対策 対応策9

知り合いのヤメ検弁護士に連絡して、小池の事件の担当と面会を頼んだ。

弁護士は、出張中との事で、二日後に面会に行ってくれる事になった。

それから1時間後には、僕は、小池のマンション前に居た。

マンションの周りを歩いて30分程廻る。

張り込みの警察は居ないように見える。

元々チンケな事件である。

それ程、警戒する必要など無い。

家宅捜索、いわゆるガサ入れの可能性がゼロでは無い以上、小池の家に行くのは早い方が良いと考えていた。

干からびた猫を見る事に為るのもキモい。

小心者の小池は、警察に何を喋っているか知れた物ではない。

しかし、小池が何を喋ろうが、小池の証言だけで僕を逮捕出来る物的証拠はどこにも無い。

警察の取り調べなど軽く切り抜ける自信が、この時の僕にはあった。

強力な弁護士も付いている。

しかしガサ入れに来た警察とのバッティングは避けたい。

ウザいからである。

弁護士に教えられた四つの数字でエントランスのオートロックを解除する。

随分、家賃の高そうなマンションであった。

玄関の鍵は開いていると言う。

鍵は閉めて出かけろ…

泥棒に入られる…

そう思った。

小池の部屋の前に立ち、ドアノブを軽く引いた。

あ?

開かない…

ガチャガチャ強くやった。

開かない…

嫌な予感に包まれた。

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部屋の中に人の気配がした。

しまった!

ガサ中か!?

一瞬で、今さら走っても遅い事を自覚した。

とりあえず玄関からユックリ離れて、見つかれば友達の振りをする事に決めた。

すると部屋の中から、マノビした女の声が聞こえた。

「はぁ〜〜い、誰ですか〜」

は?

部屋、間違えた?

部屋番号を確認する。

合っている。

彼女かなんかか?

仕方なく言った。

「小池君の友達ですけど…」

すぐに、ガチャリとドアが開く。

中から、これから出勤しますと言わんばかりの20代後半に見えるキャバ嬢が現れた。

僕を値踏みするように、ジロジロと露骨に見て来る。

ゲヒタ笑いを口元に浮かべて女が言う。

「池くん居ないけど」

池くん?

あ〜 小、池…

「はぁ… 知ってます。猫を預かりに来たんだけど…」

「猫?猫なんか居ないけど」

へ?

意味がサッパリ分からなくなった。

女に聞いた。

「小池君と一緒に暮らしてるの?今、小池君どこに居るか知ってます?」

「一緒に暮らしてるよ。池君、昨日から帰って来てない。電話も繋がらないし…」

逮捕を知らない…

小池は、僕に何をさせたかったんだ…

必ず何かあるはずであった。

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