変造カードが終わる…
僕達は自分達の先行きに強い不安を持っていた。
残り3ヶ月程で受付機なる物がパチンコ屋に設置される。
テレビで知る情報では、完全に出来なくなる様に感じた。
皆が集まると自然とこの先の自分達の身の振り方の話しになる。
ギンパラの電波ゴトが出来ずに、変造カードゴトをやっている手下達は、尚更不安であった。
皆が口を揃えて僕に言う。
「カード終わったらなんかあるんですか?」
僕は正直に答えた。
「怖がりやトロい奴には、出来る事は無い」
この時、出来たゴトは、ギンパラの電波ゴトと、たまにある中華ソバ達とのレシートゴトだけであった。
残り3ヶ月で、僕が抱えている、50人を越えるゴト師全ての仕事を確保する事は不可能であった。
末端まで行けば、そのゴト師の数すらハッキリとは分からない。
余りにも終わりが突然なのである。
僕は、この時に学習した。
ゴトは、潰れる前に次のネタを探しておかなければいけない…
そうで無ければ、いきなり干上がる…
頭では理解していたのだが、深く考えてはいなかった。
完全に手遅れである。
ギンパラの電波ゴトが出来る奴だけ生き残る…
そう思っていた。
残り3ヶ月…
一人でも多くの手下達を生き残らせる為に、僕は動き出した。
当然、自分のお金の為にでもある。
変造カードが終わると言う事は、それまで安定して入って来ていたカード代が入らなくなる事を意味する。
対策が、僕達のガッツや、技術を越えた位置のレベルで為されるのであれば、どうにも為らないのである。
これまでに稼いだお金で残りの人生を作って行くのも悪くないと少し考え始めてもいた。
変造カードが終わった時点で、3億円稼いでいたとすると、この時点では2億円を少し越えるお金を僕は持っていた事になる。
一生泥棒など続ける積もりは無い。
光の当たる世界に自分の居場所が欲しかった。
焼き芋屋の頃の僕とは違う…
世の中に出ても、きっと僕は負けない…
今なら過去を隠して暮らせる…
誰にも本名すら掴まれていない…
捕まってもいない…
辞めると、ひと言手下達に言えば、ソレを止める事が出来る奴などいない。
そろそろ辞めろと言い続けていた妄爺などは、きっと喜ぶ筈である。
潮時かな…
そんな風にも思っていた。
しかし、消し切れない欲望が、僕をゴト師の世界に留まらせた。
そして、一介のゴト師では、掴む事が不可能に近い金額を稼ぎ出す事になる。
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