彼ら二人がいなければ、良夫ちゃん達が簡単に助かったとは思えない。
しかし良夫ちゃんは、自分達が助かったのは、他の理由だと思っている。
それは、沢山の、一般のお客さん達の声であった。
二人のゴネ屋が店員に突っ掛かってすぐに、近くにいた手下が数人、遠間から店員達に、デカイ声で悪態を付いた。
出したら悪いのかや、客を何だと思ってんだ、などである。
この声に触発されて、換金所前の、長蛇の列の中の、一般のお客さん達、数人も騒ぎ出した。
彼らから見た、婆さんや良夫ちゃんは、どう見ても、か弱い老人である。
それが、あらぬ疑いを掛けられて、店員達にイジメられている様に見えたのではないだろうか。
「年寄りに何すんだ!」
「出したら捕まえるのか!」
そう言う声がアチコチで挙がったと言う。
儲けが少なかった鬱憤晴らしも、多少はあったのではないだろうか。
その内、興奮したお客さんの中から、店員に掴み掛かる人まで現れ始めた。
換金所前は大騒ぎに為ったと言う。
お客さん達は、どんどん興奮して行き、店員達はソレを宥めるのに必死に為った。
何が元で、小競り合いが起こったのかも、分からなく為っていた。
危機を感じた大型店が取った対応は、婆さんと良夫ちゃん達への謝罪であった。
間抜けな店は、集人観視の中、ゴト師に謝ったのである。
それにより、換金所前の興奮は、どうにか鎮静化の様相を見せた。
皆が見守る中、婆さんと良夫ちゃんは、堂々と、袋一杯に詰め込んだ景品を換金した。
続く様に、多少不自然な量の景品を持った手下達も換金を終えた。
ソレに文句を唱える店員は、既に居なかった。
こうして、大型店での、全ての換金が無事に終了した。
全てが終わって見れば、最初に店員に突っかけたゴネ屋の二人は、要らなかった様にも思える。
しかし、ソレは結果論である。
最初に、二人を突っかけさせたからこそ、後に続く手下達に、悪態を付かせると言う、ダブルの方法を僕は思い付いたのである。
そしてソレが、お客さん達を味方に付ける結果に、偶然なったのであった。
ボケ二人が何を言おうが、4万円の支払い義務は絶対に二人にある…
絶対だ!!
それなのに…
きっと取れない…
二人は僕の理屈など理解しない…
絶対だ!!
しかし、本当の被害者は、大型店であった。
不幸の連鎖は、まだ続く。
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