良夫ちゃんと婆さんが車の所へ現れた。
二人の問題児は真剣な顔である。
言いたい事は聞かないでも分かった。
「玉、両替して来ても良いですか!?」
まるで僕が、親のカタキの様である。
薬で多少治まっていた体が、また痛みだした。
二人の存在は僕にとって薬と逆の作用をする様である。
人間ポイズン…
「玉か… 今日、もう帰るなら良いよ」
毒が全身に廻る前に追い払いたかった。
しかし、この毒は、ちょっぴりではあるが、一応物を考える。
婆さんが良夫ちゃんにコソコソと何かを言った。
嫌な予感と悪寒が走る…
良夫ちゃんが、婆さんの入れ智恵を、そのまま言った。
「じゃあ玉良いです。レシート20万円分づつ下さい」
なんでお前らが…
帰れや!
頼むから!!
クソババア!!
婆さんは損得を一瞬で計算した。
僕が計量機に流してやった玉は、二人分で5万円程しか無かった。
そのお金を捨ててレシートゴトをすれば、二人が手にする金額は、軽く5万円を超える。
小を捨てて大を取る…
中々出来る事では無い。
ババァ…
いつも、全部トボけだよな…
毒は既に、僕の全身に廻っている様であった。
二人と言い合う気力が出ない。
計量機に流して来た玉のレシートを婆さんに渡しながら言った。
「ほら… 両替して来たよ。これで良いんでしょ!」
受け取った婆さんがレシートを確認して言った。
「こんなに少なかったかしら…」
どんだけ…
「良いんだよ… ごまかしたりして無い…」
ジトっとした目で婆さんが僕を見る。
なんでやねん!
負ける訳には行かない。
無実なのである!
良夫ちゃんが口を開いた。
「足りない分はレシート貰えば良いんじゃない?」
え?
僕、有罪!?
ざけんな!!
お前ら、僕にどれだけ迷惑を…
怒りが僕の挙動を怪しくした。
それを見た婆さんのジト目に力が加わった。
完全に犯罪者を見る目であった。
駄目だ…
僕の負けだ…
理屈は通じない…
証拠もない…
めんどくさい。
3万円の偽造レシートを婆さんに渡した…
「これで良いだろ… 帰ってくれ…」
しかし、二人は、手を緩めてはくれなかった。
「両替行ってきます。20万分レシート下さい」
めまいがする…
「余ったら…」
僕は、二人にソレだけ言って、思考を閉じた。
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