無理!
嫌過ぎる…
歩くのが精一杯で走る事は出来ない。
勘弁してくれ…
店員達に目を付けられている列へと入った。
8割方、席は埋まった状態であった。
パッと見で二人は見えない。
手下三人も見えない。
どこだ…
足元に積まれたドル箱をよけながら、僕は狭い通路を歩いた。
あれ…………?
誰もいない…
店員の狙いは、間違い無く、この列である。
列の端まで歩いて振り返った。
僕の横には、目を付けられた列のお客さんから見えないように、店員が一人、隠れるように立っている。
逃走を防ぐ役割の店員であろう。
僕らと関係無いゴト師か…?
誰がゴト師かは分からなかった。
他の列に良夫ちゃん達は居る…
目を付けられている列を無視して僕は隣りの列を見に行った。
居た…
婆さんと良夫ちゃんは列の真ん中辺りでパチンコを打っていた。
安堵と同時に怒りが込み上げる。
ボケも大概にしろ!
二人に近づき声を掛けた。
「バレてるよ… 隣りの列で誰か捕まりそうに為ってる。すぐ店出な… 分かった!?」
二人は驚いた顔で、分かりましたと言った。
二人はサンドからカードを抜いて、積んでいる出玉を計量機に流す為、店員を呼ぶボタンを押そうとした。
どこまで安全より金なんだ…
ア然としてしまう。
「玉なんか後で良いからすぐに店出ろ!」
周りのお客さんが驚いた顔で僕を見る。
頭がおかしいと思われたのは僕だった…
二人も驚いた顔はしたが渋々台を離れてエレベーターへ向かう。
その時、隣りの店員達に目を付けられていた列の方で、女性の悲鳴が聞こえた。
結構な絶叫である。
捕まったな…
続いて男の怒声が聞こえた。
ん!?
暴れてる?
見なけりゃ損だ!
面白そーー!
怒声を聞いて驚いている良夫ちゃん達に、下へ行けと手で合図して、僕は隣りの列を見に行った。
まだ若く見える男が、三人の店員に体中を掴まれて、もがき捲くっている。
見ず知らずのゴト師であった。
足元に積み上げられたドル箱は、幾つも倒れ通路中に散乱していた。
「離せよ!!殺すぞ!!」
「大人しくしろ!!」
近くに座っていた、お客さんをも巻き込んでいる。
最低な逮捕劇であった。
店員もゴト師も必死な顔である。
笑わすな…
腹筋が切れそうだ…
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