普段は気を使って出来るかどうかを手下達の見ていない所でツルッパには聞く。
しかし、自分の体の痛みでそれどころでは無かった。
つい忘れてツルッパに行けと言ってしまった。
ツルッパは皆が見ている前でソレを青い顔で嫌がった。
嫌がられた時に、しまったとは思ったが、既に遅い。
手下達の白い目がツルッパに集中していた。
周りに軽く見られた奴を連れ廻す訳には行かない。
それは僕自身が決めたルールを根底から覆す。
ここで一度の無理はどうしても必要であった。
皆が嫌がる部分を進んでやれば復権する可能性は高い。
その後は、またハッタリで過ごせる。
見た目は怖いのである。
僕はツルッパからの電話を待っていた。
しかし大人しく待っては居られ無かった。
もう一人の問題児がやらかした…
「良夫ちゃん、一人で何回も両替行ってますよ!良いんですか!?」
そう一人の手下が僕に言った。
そんなはずは無い…
レシートを、何回も両替に行く程、渡していない…
更に手下が言う。
「それに変造カードでパチンコ打ってても良いんですか!?」
良くはない…
「うるせぇな… てめぇ、ヘタレの癖に、ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ。ぶっ殺すぞ…」
手下を脅しで追い払う。
手下達の中には、自分の儲けや損や安全に関してならば僕に牙を剥く奴らも居る。
組織の形はとっているが僕は、本当の意味での親玉では無かった。
普段ならば脅しで押さえ込む。
殺し合いなら負けないと言う態度で手下達に接する。
しかし、この日は違う。
僕は車の助手席を起こす事さえ体の痛みで出来なかった。
僕を見た手下は、間違いなく僕が喧嘩で、こっぴどくやられたと思っている。
どう見ても相手を病院送りにした様には見えない。
何人かの手下には言った。
「相手入院してるがな。僕は無傷だし。動けないのは筋肉痛だよ」
こんな言い訳を誰が信じるであろう。
鼻で笑われる。
証言者は居ないのである。
だからと言って細かい喧嘩の内容は説明出来ない。
余りにも卑怯である。
手下と殺し合いに為った時には使わなければいけない必殺技でもあった。
世の中のロクデナシを集めた様な手下達に、負けて身動きが出来なくなった親玉を許す寛大さは無い。
朝からの不穏な空気が、ツルッパと良夫ちゃんを庇う事で、燻り始めた。
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