「この店は平気ダ。仕込みも無いしナ」
仕込みが無い…
「そうか… なら通路の両脇だけガードさせる。ピンは最悪の時以外は暴れさせるなよ。なるべくお前に近い台でパチンコ打たせとけ。両替は予定通り始めとく。良いか?」
中華ソバは満足気に頷いた。
12時の開店から30分程して、中華ソバ達はレシート作りに向かった。
ガードの手下二人は開店と同時に既に店内に入らせて、レシート作りに使う計量機の近くの台でパチンコを打たせていた。
その手下から入店後少しして電話が来た。
「なんか余り混んでませんよ。空台が結構あります」
少し信じられなかった。
開店初日に自分で店内を偵察した時は、通路まで立見のお客さんが溢れ、歩くのにすら邪魔であった。
二日目を偵察した手下も同じ事を言っていた。
しかしこの手下は気になる事も言っていた。
偵察に行った際に、どうせならと思い、変造カードを使ってパチンコをしたと言う。
当然僕でも同じ事をする。
出る可能性の高い店の方が楽だからである。
周りにもチラホラ変造カードゴト師が居たと言う。
手下は閉店間際までカードを使い続けた。
特に問題は無かった。
変造カードの使用には問題無かったが出玉に問題があったと言う。
新規開店の店とは思えない程の出し渋りを感じたそうである。
自分一人ならば、ただのツキだと感じるであろう。
しかしアチコチでハマりに怒ったお客さん達がパチンコ台を叩き捲くったり、店員に食って掛かる姿を目撃している。
新規開店と言えば店の宣伝の為にお金をばらまくと言うのが常識の時代である。
小さい店でも、1、2千万円。
大きな店では、ひと月程を掛けて、1億円を越えるばらまきをする所もある。
自分は例え出なくても、周りが出していれば、お客さんは、自分のツキの無さを歎きはしても、ある程度納得する物である。
新規開店のお店で沢山のお客さんが店員に食って掛かるなど珍しい事であった。
しかし僕は、この店が出し渋ったとは思っていない。
出している雰囲気作りに失敗したのだと思っている。
原因は、ホールが縦長のビルで、フロアが数階に別れている事である。
更に、店の形状も悪かったと思う。
一つのフロアだけを見れば狭い店である。
それが縦に集まって一つの店になっている。
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