車の後部座席では、レシ担男が相変わらず唸っていた。
金玉は潰れているように感じた。
病院に連れて行かなければまずい…
もう僕の中に怒りは無い。
そもそもレシ担男を怒らせたのは、僕の失敗なのである。
言い過ぎだった…
埼玉でゴトをしている筈の手下を電話で呼んだ。
「すぐ来い…」
嫌は無い。
中華ソバに言った。
「コイツ、僕の手下の車で病院に連れて行きな。後でコイツが起きて、僕に文句があるって言うなら連れて来な。いつでも相手してやるから… それと、今度のゴトはどうする?」
中華ソバは考えていたのであろう、すぐに答えた。
「そっちが問題無いならやろうヨ。レシ担男はハズすから… レシートは俺が作るよ。でも3軒は無理だから2軒ぐらいな!出来るかヨ?」
はっきり言って、やりたく無かった。
明日、明後日と体が動けるように為っているとは思えなかった。
喧嘩の後は、例え無傷だったとしても、全身が筋肉痛になるのが僕の普通であった。
ソレは筋肉痛のレベルを越える筋肉痛であった。
寝返りを打つだけで全身がツル。
ベットから起き上がれずに、クソを漏らした事すらある…
この日は、オムツを買おうか真剣に悩んでいた。
「じゃあ、やろう…」
上手く出来れば、一日で僕の取り分は、100万円を越える計算であった。
車の中で手下に指示ぐらいは出来る…
金の亡者振りは健在であった。
中華ソバは喜んでいる。
レシ担男は、乱暴者で、元々仲間内で嫌われていた。
それが、引き続き僕と組む、中華ソバの事情であった。
「お前ら病院行けるのか?」
不法滞在や、不法入国の〇国人達は保険証を持たない。
保険の利かない病院の診察料金は驚く程高い。
病院へ行かずに、全てを漢方薬で治そうとする彼らには驚く。
しかし、金玉が潰れていた場合、いくらなんでも漢方薬では無理であろう。
「新宿に闇医者が居るヨ。高いけど入管は呼ばれないから…」
「そうか…」
ポケットを漁ると15万円程あった。
渋々渡す。
「これ使え…」
要らないと言え…
すぐ仕舞う…
しかし中華ソバは、アッサリと、お金を受け取った。
やっぱりね…
ありがとうと言った中華ソバが更に言う。
「コイツに仕返しなんかさせないから心配すんナ。先につかみ掛かったコイツも悪いヨ」
ムカッと来た。
「おい… 僕が、このゴミを怖がって金出したと思ってんのか?勘違いしてると、お前もブチ殺すぞ…」
コメント