グラグラする体を必死に押さえて、レシ担男を見た。
僕程では無いが、彼も荒い息をして見知らぬ人達に言い訳をしている。
殴られた顔の表面の痛みを訴えていた。
あんなに手応えがあったのに表面かよ…
くそ…
僕は、見知らぬ人に話し掛けられても、答える事すら出来ない程、疲れていた。
喋れば最後の一発が出せなくなるような気がした。
手首だけで見知らぬ人にもうやらないと伝えて追い払う。
その仕種を見てレシ担男は喧嘩が終わったと思っているようだった。
甘ちゃんめ…
僕の前に立った時が、お前の最後だ…
僕は体が動く間は絶対負けを認めない…
レシ担男が僕に何か言っている。
僕は手を顔の前で振り、もうやらないと言う合図をした。
彼は勝ち誇った顔になって更に何か言っている。
うるせぇ野郎だ…
すぐ喋れなくしてやる…
「警察が来る… とりあえず、ここ離れよう…」
中華ソバが困った顔で賛成した。
「そうしよウ。早く離れよう!」
レシ担男も警察が来るのは困るのであろう。
僕の意見に賛成した。
この後、僕をどうにかする積もりなのかは分からない。
ただ僕に、偉そうにしたいだけのように感じた。
車を停めた駐車場まで、約200メートル。
心配そうにしている見知らぬ人達を無視して三人で歩き出した。
体が揺らぐ。
僕は見知らぬ人達を無視したが、感謝していた。
間違いなく助けられた。
彼らの男気と無償の優しさに応える為には、この場でレシ担男の金玉を潰す訳には行かない。
また止めに入られたら、僕は彼らにも動ければ手を出す可能性がある。
既に、僕の前を歩くレシ担男は、スキだらけであった。
どこで襲い掛かるかを考えた…
次の角を曲がって少し行った所にしようと決めた。
中華ソバが僕と並んで歩きながら言う。
「大丈夫カ?」
うるせぇ…
テメエもすぐにぶっ飛ばす…
同情はよせ…
殺してやりたくなる。
角を曲がった。
木刀あれば楽だったのに…
そう思うと、少し笑えた。
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