やみくもなパンチをやめて、レシ担男の股ぐら辺りを探った。
探ってすぐにグニャっと言う感触が手に伝わった。
体勢が悪すぎて力は全く入っていない。
握り潰す事など絶対無理 …
しかし、レシ担男は驚いたのであろう。
僕を振り回していた両手をイキナリ離した。
振り回されていた勢いのままに、僕は地面をゴロゴロと転がった。
完全に、大人と子供のような力の差を感じながら転がった。
回転が止まり立ち上がる。
虚弱な体…
振り回されていただけなのに、体力の限界を感じた。
完全に手足に力が入らない。
泣きたくなった。
レシ担男は、やはり喧嘩馴れしていなかった。
僕に追い撃ちを掛ける事なく、肩で息をしながら必死な形相でコチラを見ている。
目が合った。
貴様…!
殺す!!
絶っ対殺す!!
興奮が僕の目の前を再び真っ白にした。
ここから記憶がトぶ…
冷静さなど微塵も無くなっていた。
ただガムシャラに突っ掛かって行っただけの様に思う。
パンチを出した記憶はない。
チラリと思い出すのは、どこかに噛み付こうとしていた事だけである。
繁華街の片隅とは言え、周りには沢山の人がいた。
その人達が、僕に反撃のチャンスを与えた。
僕とレシ担男の余りの力差を見て哀れに感じたのであろう。
数人の、見知らぬ人達が、体を張って喧嘩の仲裁に出て来た。
僕は、羽交い締めにされて、レシ担男の背中に乗っかっている所を引きはがされた。
「やめろ、アンチャン!勝てる訳ねーだろ!体が全然違うよ!」
うるせー
あと少しで首筋に噛み付けた…
そうすりゃ僕の勝ちだった…
中華ソバと、見知らぬ男が、レシ担男をナダめている。
「アンタ勝つの分かってんだろ!?やめてやりなよ!」
目の前の景色がハッキリ見えて来た。
羽交い締めから逃れる力が、僕には残っていなかった。
その場にへたり込みそうだった。
蹴りやパンチは一切食らっていない。
まだ僕は立ってる…
まだやれる…
見知らぬ人が、僕を止める時に言った言葉は理解していた。
その通りである。
でも、僕の喧嘩は、いつもここからだ…
やっとレシ担男にスキが出来る時間が来た。
油断しろ…
ひと蹴りで、金玉潰す…
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