レシ担男は、僕の首の後ろを掴み、引き付けて、上から押さえ込むようにしながら、僕の体を右へ左へと、振り回し始めた。
体は、くの字になり、むりやりお辞儀をさせられているようであった。
相撲取りが、巡業などの時に行う、ちびっ子相撲で、ふざけた時の形に似ている。
僕は、ただ振り回されていた。
右へ一回…
左へ一回…
右へ…
左へ…
僕の視線の先には、地面と、レシ担男の、ひざ頭しか見えない。
振られ始めてすぐに気付いた。
ひざ頭が間違いなく僕の顔面に飛んで来る…
彼が足を少し上げるだけで顔面にドンピシャ当たる。
僕は自由だった腕を十字にして、ひざ頭に備えながら振り回され続けた。
振られている内に冷静になった。
体に痛みは全くない。
あれ?
なんで膝が来ないんだ?
喧嘩に馴れている人間ならば確実にやって来る。
そもそも喧嘩馴れしていれば、つかみ掛かるような真似はしない。
あ…
コイツ…
喧嘩した事ねぇな…
どうにかして反撃しようと思った。
膝蹴りは来ない…
僕を振り回してるだけだ…
十字にしている腕を解いた。
金玉…
普段、喧嘩になった時、いつもは適当な喋りで油断させておいて、キンタマを後ろから蹴り上げるのが僕の得意技である…
なにしろ卑怯…
卑怯に勝る必勝法は無いと僕は信じている。
この時も、必勝法だけが頭をよぎった。
どこだ…
金玉…
だいたいの位置は分かったが、上から押さえられている為、確実な金玉の位置は分からなかった。
この辺か!
不自然な体勢の為、力の入らないパンチを上の方に向けて出した。
当たったからと言って、どうにかなるとは思えない程、腕に力の入っていないパンチであった。
レシ担男のドコかに僕の手は当たったが金玉では無い…
やみくもに金玉を狙って手をだした。
しかし当たらない。
僕の頭の中には金玉しか無くなっていた。
握って潰す!
無理!
汚い!
しかし体は、握り潰す事を選択していた…
コメント