店の造りも計量機の防犯を完全に忘れているように見えた。
最新型カメラに頼っているのであろう。
このカメラは現在のパチンコ屋が取り付けているカメラと変わりがない。
確か、広角度レンズを採用したズーム機能付きカメラであった。
ゴト師が居ると分かって捜されたなら、これ程、脅威のカメラは無い。
店内の9割近くをカメラ内に捉え、ズームで寄れば人の目の動きまで掴む。
この当時の僕は、そんな事は知らない。
高そ〜…
でもバレなきゃ平気…
そう考えて、カメラは意識から外していた。
考えても見破れたり出来る事は無いのである。
ただ、腕が縮むだけであった。
防犯が強化されればされる程、諦めの気持ちが強くなっていった。
僕達三人は、一度店を出た。
案の定、レシート担当の男が言った。
「余裕だ。いくらでもすぐ作れル」
僕の出番が消えた事を意味する一言であった。
普通は喜ぶ所だか、僕は当然ガッカリした。
他のチャンスを待つしかない。
レシ担男は強気の男である。
アオってみる。
「じゃあ、あと二軒ぐらい一日でやれるな。もう偵察良いだろ。次の店探しに行こう」
レシ担男は中華ソバを見て、どうするか、目で尋ねている。
「出来ねーなら僕が、やってやるよ。店も全部探して来るし」
レシ担男は僕を睨むように見ている。
露骨に自分の仕事を取り上げようとする僕に、頭に来ているようであった。
根性はあるが、単純馬鹿の様である。
中華ソバをアオるより、コッチをアオる方が早そうだった。
「睨むなよ。怖いのは恥ずかしい事じゃないよ。無理したら捕まるからな。僕は全然平気。お前と根性が違うから」
レシ担男は、物凄い顔で僕に掴み掛かる勢いを見せた。
これまでにもレシ担男に対する僕の態度は悪かったので我慢が切れたのであろう。
言葉は〇国語に戻り、何を言っているのか分からない。
結構な迫力である。
手が伸びて僕の胸倉を掴もうとした。
僕は虚弱体質である。
力も弱い。
掴まれたら簡単に振り回される事は子供の頃から知っている。
僕は、掴まれる直前に、右の拳を、前に力いっぱい突き出した。
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