韓国人・○国人68

ボロ船の船ゾコにある狭い小部屋には、40人近い密航者が居た。

排泄物は、用意されたドラムカンから溢れている。

余りの刺激臭にピンの意識は覚醒した。

肉まんを握り絞めていた筈の両手を見ると、饅頭が両手に握られていた。

その饅頭にピンは物も考えず食いついた。

本物であった。

あらかたを食べ終わり、周りを見ると、一人の男が顔面から血を流し、うずくまっていた。

その男を遠巻きにして密航者達の脅えた目がピンを見つめている。

ピンは、生きる為に、無意識で饅頭を男から奪っていた。

周りの密航者達はピンを恐れた。

いつ自分達が襲われるか分からないからである。

彼らは、無駄に殴られるよりも、ピンに残り少ない食糧を分け与える選択をした。

しかし予定よりも延びた航海に食糧は全て底を尽いた。

本当の地獄の始まりである。

長い船旅だが、甲板に出る事は許されず、船底の小部屋には外から鍵が掛けられていた。

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慣れない船旅で、小部屋は吐瀉物で溢れ、汚物の臭いも充満している。

体力の無い者から一人、また一人と倒れて行った。

その中でピンはまだ生き残っていた。

腹一杯食うまでは死ねない…

その強い想いがピンの意識を繋ぎ留めた。

船は日本の沖合で台風を待っている。

嵐に紛れて日本の沿岸に接岸する。

それが日本の沿岸警備隊の目から逃れる唯一の方法であった。

限り無く薄い可能性に賭けた航海が終わろうとしている。

九州の沖合に嵐が迫っていた。

彼らにとっては神風に等しい。

木の葉のようなボロ船は、沖合で嵐の中、夜のトバリが降りるのを待っていた。

午前3時…

密航者達が夢にまで見た日本に接岸した。

ピンは思った。

遠いわ〜!!

腹減った!!

船を降りる時、ピンは船底の汚物まみれの小部屋を振り返った。

そこには、二度と目を開く事が無い、三つの骸が転がっていた。

船が帰り道で海へ流すと言う。

ピンは、殴った男が、日本の土を踏めなかった事を心で詫びながら、日本に上陸した。

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