中華ソバの横に座る〇国人が、僕と料理を交互に指差しながら、仕切りに中華ソバに〇国語で何か言っている。
ウザい…
「おい、僕の前で日本語以外を口にするな。気にいらない。内緒話しなら余所でしろよ」
〇国語でコソコソ話されるのは、良い事が何もない。
〇国人と向かい合う時には必ず最初に強気に釘をさした。
僕は随分失礼な奴であった。
料理に手を付けない事で、少し怒った感じの〇国人は名前をピンと言う。
〇国人で、現場に出るゴト師のほとんどが日本に来てから悪くなったのに対して、ピンは〇国でも犯罪者であった。
カタコトの〇国人を馬鹿だと認識していた僕も、時間が経つに従い、その考えを改めた。
しかし、このピンだけは本物の馬鹿であった。
国で犯した犯罪は全て暴力絡みの粗暴犯である。
主に食い逃げ…
追い掛けて来る店員を殴り飛ばす事、数度…
シャツの上を脱ぐと胸や腹や背中に無数の刀痕がある。
それは10センチ程のミミズ腫れのように見える。
その傷が体の前後を覆うようであった。
どう言うシチュエーションで切られる事になったのかは定かでは無いが、食い逃げの際に料理人二人に前後を固められたと言う。
ピンが殴り掛かろうとした所、料理人二人も負けていなかった。
手にしていた四角い中華包丁でピンに応戦した。
料理人はピンの前後に立った。
前に立った料理人は両手に包丁を持つ。
その包丁を縦に振るって犬カキをするように何度もピンの体の前面に切り付けた。
もう一人の料理人もピンの背後から同じように切り付けた。
致命傷になるような深い傷は無く、体の表面をハスるように切られたと言う。
その間ピンは、逃げる事も、ままならず、棒立ちで悲鳴を上げていた。
話しのシンイは分からない。
傷の形状から、他の切られ方を僕は想像出来なかった。
ピンの仲間は全員僕に同じ話しをした。
「ピンは〇国で1番馬鹿アルヨ」
それがピンを人に紹介する時の決まり文句であった。
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